第26話 最初の集まり
昼休み。
「応援団になったって本当か!?」
教室に戻り、丁度4時間目の授業の終了を知らせるチャイムがなって、1分も経たないうちに菖蒲が勢いよく教室に入ってきた。
「あ、はい」
'情報回るのはやくない?'
そう思いながら返事をする。
「ありがとう。本当にありがとう」
菖蒲は本当に嬉しいからか何度もお礼を言う。
少しして落ち着いたのか「でも、どうして心変わりしたんだ」と尋ねた。
「あー、それは……やってみたくなって」
本当のことは言わない方がいいと思い、誤魔化そうとしてそう言ったが、何故か理由が嘘っぽく聞こえる。
「……そうか。ありがとう」
菖蒲は理由を聞いてすぐに嘘だと気づく。
そして、女子たちが何か言ったから応援団になってくれたのだと推測する。
謝るのは違うと思い、礼を言うが、どうしても申し訳なく感じる。
「いえ、自分で決めたことですから。なので、来週からよろしくお願いします」
「ああ。こちらこそよろしく頼む」
「嵐みたいな人だね。菖蒲先輩って」
聞きたいことを聞けて満足したのか出ていく菖蒲の後ろ姿を眺めながら芹那が呟く。
「うん。確かに」
楓が頷く。
「ていうか、情報回るの早くない?誰が教えたの?私ら3、4時間目、ずっと体育館にいたのに。さっき教室戻ったのにどうやって知ったんだろう?」
桃花は疑問を口にする。
昼休み半ばか、後半に来るならわかるが、始まってすぐきたとなるとどうやって知ったのかどうしても気になる。
「考えられるのは一つだよね。誰かがスマホで教えたんだろうね」
芹那は呆れたようにため息を吐く。
「それしかないよね」
昼休みになってから聞けばいいのにと思うと、私も苦笑いしかできなくなる。
「菖蒲先輩が知ってるってことは他の先輩たちも知ってるだろうね」
桃花の言った通り、応援団、ダンス、よさこいの係のものは、1年と3年に知られていた。
誰かわかった瞬間、3年の赤組と青組はとても喜んだ。
そして両組とも自分たちの組みが勝ったと確信する。
1年は5、6時間目に係決めなので、決める前に誰がどの係か知れて物凄く喜んだ。
1年の係決めは先生たちがドン引きするほどの熱量で行われた。
特に赤組と青組の応援団決めは!
「もう知っていると思うが、俺が青組の応援団団長になりました菖蒲紅です。よろしくお願いします」
菖蒲が自己紹介を終えると応援団皆が拍手をする。
その後に副団長、3年、2年、1年という順で自己紹介していく。
3年は男女共に6人。
1、2年は男女共に4人ずつ。
計28人いる。
順番が回ってきた。
少しだけ緊張する。
「2年の桜庭巴です。よろしくお願いします」
自分の番が終わり、ホッとしているとたまたま菖蒲と目が合う。
すごいニコニコしていた。
噂で聞いたイメージとは少し違うな。
'噂なんてだいたいそんなもんか……'
そう思いながら、残りの人たちの自己紹介を聞く。
「全員の自己紹介が終わったので、青組の演舞の説明をします。俺たち、青組はアクロバットを取り入れます」
菖蒲がアクロバットをするというと、一部のものは困惑する。
'あ〜、なるほどね。それで私を誘ったのね'
なぜ誘われたのか理解し、納得する。
「もちろん。全員ができるとは思ってないので安心してください。できる人だけでやるので。とりあえず、バク転ができるものは手を挙げてくれ」
菖蒲は皆に言うが、最後は私の方を見て言う。
もちろん、挙げるよな、と圧をかけてくる。
私はそろりとゆっくり手を挙げる。
私以外に手を挙げたのは3人だけ。
2年の男子2人と、1年の男子が1人。
「4人か……」
副団長の如月彩花(きさらぎあやか)、先日お願いにきた女の先輩が呟く。
「とりあえず、やってもらおう。他に何ができるかも聞かないとね」
如月は菖蒲にコソッと話しかける。
「だな」
構成も振り付けももう考えているが、誰をどこにするかは個人の能力次第で変える。
3年は前だが、1、2年は違う。
「とりあえず、4人はこっちで1人ずつやってみてくれ」
「はい」
菖蒲に言われ、1人ずつバク転をする。
「全員、上手いな。バク宙できるものはいるか?」
菖蒲に聞かれ、できるので手を挙げるが挙げたのは私だけだった。
'えっ!?まじか……'
嫌な予感がして、ゆっくりと菖蒲の方を向くと目を輝かせて私をみていた。
なんとなくこの後、菖蒲が何を言うか予想できた。
「やってみてくれ!」
'やっぱり……!'
「はい」
やると決めた以上、全力でやらなければ負けた人たちに申し訳ないと思う。
気合いを入れ直してからバク宙をする。
成功すると拍手が起きた。
少し恥ずかしかったが、褒められるのは嬉しい。
これで良かったのかと、確認のため菖蒲の方を向くと3年全員で話し合いをしていたので不思議に思いながら、みんなのいる場所へと戻る。
「桜庭さん。本当に運動神経いいね。超かっこよかったよ!」
「ありがとう。岩崎くん」
「堅苦しいよ。これから一カ月、一緒に頑張るんだ。蒼って呼んでくれ」
「わかった。なら、私も巴って呼んで」
蒼は人見知りする私とは真逆で誰に対してもフレンドリーだ。
応援団が決まった日からよく話しかけてくれるので、すぐに仲良くなれた。
「オッケー。巴。これから頑張ろな」
「うん。頑張ろうね。蒼」
私たちはニッと笑い合う。
蒼side
うわぁ!
あの桜庭さんと同じ応援団として過ごせるだけでも夢のようなのに!
名前呼びしちゃった!!
あ、蓮に自慢しなくちゃ。
いや、待て……そんなことしたら、殺されるかもしれない。
うん、やっぱり黙っておこう。
もちろん。友の恋は応援する。
でも、それとこれは話が別だ。
あの、高嶺の花の桜庭巴と一切接点のなかった俺が、今では名前を呼び捨てにする仲だなんて!
これは羨ましがられるな。
フフッと嬉しさのあまり顔がニヤけてしまう。
「おーい。蒼。どうしたの?」
巴は急に黙ったと思えばニヤニヤし始めている蒼が心配で顔の前で手を振る。
「大丈夫かな……?」
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