あとがき

 泉田です。

 随分と久方ぶりとなるあとがきを前に、もう一〇分ほど私の手は止まっております。


『あの夕景に挟んだ栞は、まだ一ページも進んでいない。』楽しんで頂けましたでしょうか?


 本作ですが、執筆していた頃から悩んでいたことがあります。

 それは「この作品はどこにジャンル設定するべきだろうか」です。作者なんだからはっきりしろよ、という声が飛んできそうですがひとまず理由を聞いてほしいです。

 本作、大まかなジャンルの比重が「ドラマ(6)」・「恋愛(4)」だと私は思っていたんですが、読了された方は感じられたかもしれませんが後半になるにつれて比重が真っ逆さまになるんです。

 それでも、やはり重きを置いていたのはテーマである「等身大の自分を受け入れていく」という部分で。そういう意味では最後の書店での幸洋が写真を撮られるシーンなど、一話との対比に出来ていたのではないかなーと思っています。

 そうなればやはりこれはドラマとしてジャンル設定しようと思い結論に至りました。(やばい一区切りついちゃった)


 そんなこんなで投稿前の段階からかなり頭を抱えていたのですが、皆さん第一話の幸洋を見て真っ先に何を感じられましたか?


「それおま言う?」「こいつめっちゃ人目気にしてるやん」


 もしそう思われたなら、私はこれ以上なく幸洋というキャラクターのどうしようもない矛盾を描くことができたと自負できます。

 服装といい、同級生と鉢合わせてからの態度といい、第一話での幸洋は後々の彼の言動を見ているとイライラするほど「人のこと言えない立場の人間」のものなんですよ。なんでお前が秋山に説教垂れているんだ、と私イライラしていました。

 しかしながらそれが沖平幸洋という「大人としてのふるまいを理解しているくせに、大人になる方法を知らない子供」の本質で、まさしくモラトリアムという言葉のよく似合う青年に仕上がったと思っています。

 秋山に殴られたときも、ほとんどが幸洋が小心者故に生じた被害妄想ですしね。


 それでもなんとか「向き合ってみる」という選択を取り、大人になる第一歩を踏み出した幸洋。

 今後彼がどう生きていくのかは、私にもわかりません。

 きっと隣には凛がいてくれるとは思いますが、まぁたまには喧嘩してるかもです。お互いに本音を言えるわけですから。


 皆さんにはいますでしょうか。本音を打ち明けられる人。私にはいません。

 なので私はいつか虎になるかもしれません。あるいは毒虫になっているかも。


 どちらにせよ悩みや本音を抱え込んだままにしておくのは経験上あまりお勧めしませんので、早めの対処をお勧めします。(どの口が)


 随分と長くなってしまったので、この辺りでお暇を。

 

 最後になりますが、少しでも作品の雰囲気を共有したいと思い執筆中に聴いていた音楽を近況ノートの方で公開させていただければと思います。(YouTubeに飛べるようにリンクを貼れそうなら記載しておきます)

 もしお気に召した曲があれば、日々の生活のなかに取り込んでいただけますと幸いです。


 それでは本当にここでお別れを。

 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。


 また広い広い言葉の海のどこかでお会いできることを切に願っております。

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あの夕景に挟んだ栞は、まだ一ページも進んでいない。 泉田聖 @till0329

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