もっと理想的な異世界へ

草原 草原

第1話 まさに定番の異世界

いつも通りの朝。何の変哲もない日常。何も考えず学校に行き、大したこともせず帰る。そんな平凡な1日が今日も始まる・・・はずだった。


朝のチャイムが鳴りみんなが席に座ると、先生と共に教室に知らない男の子が入ってきた。転校生だろうか。


「えーっと、じゃあサヨナラ」


男の子が、開口一番にそういうとクラスメイトは次々と倒れていく。そして反応する間もなく、俺も倒れてしまった。




目を覚ますと、明らかに教室ではない場所にいた。目の前には先ほどの男の子とは容姿が全く違う男の子が1人立っている。周りにはクラスメイトや先生もいるようだ。


「こんにちは。僕はルーラ、一応この世界で神をやっているよ。よろしくね」


自己紹介をした後、自称神のルーラはいろいろと説明をし始めた。



 まず、俺たちは地球で死んだらしい。そして、この世界に転生したみたいだ。年齢や容姿は地球のままなので転移が正しい気もするが、死んだらしいので転生だ。

 そして異世界転生といえば、定番のチート能力だが、例にもれず与えられているらしい。これはうれしい点だ。

 さらに定番の魔物も存在しており、魔王なんかもいるらしい。まさに定番の異世界転生だ。



「大体、分かったかな?何か質問ある?」


ルーラは一通り説明を終えた後、俺たちに質問があるか聞いてきた。


「私たちは、この世界で何をすればいいんでしょうか」


クラスメイトの1人が尋ねる。


「そんなの自分で考えろ・・・って言いたいんだけどね。良かったね、この世界ではやることがあるよ」


魔王退治か?文明発展か?期待で胸が膨らむ。周りのクラスメイト、特に男子は皆同じ気持ちみたいだ。


「そうだね・・・とりあえず、『ステータスオープン』って言ってみて」


ルーラがそういうと皆一斉に『ステータスオープン』と唱え始めた。俺も気になるので唱える。


近藤こんどう 都乱とらん/男/16才/人族/ミッション/能力】


こんな画面が空中に現れた。まさしく「異世界」という感じだ。


「みんな、ステータスは見えた?気になる項目に触れると、詳しく教えてくれるよ。とりあえず、『ミッション』の欄を見てくれる?」


言われるがままに『ミッション』に触れてみる。


【毎日が非日常、非凡で楽しい世界にしよう 0/1】


こんな画面が現れた。なんだこれ。


「それぞれミッションが与えられていると思うんだ。基本みんな違うから下手に口外しないほうがいいと思うよ。そして、ミッションはクリアすると素晴らしい報酬が得られます」


ルーラが説明を始めたので皆、真剣に聞き始めた。


「クリアした人にはなんと、何でも1つだけ願いを叶える権利を持ちます。『お金持ちになりたい』でも『世界を支配したい』でも『元の世界に戻りたい』でもなーんでも叶っちゃいます。もちろん『嫌いなあいつの存在ごと消したい』とか『神になりたい』とか無茶苦茶な願いでも叶うのです!」


なんだそれ。無茶苦茶いいじゃないか。


「だから、皆の目的は『ミッション』をクリアすること。君たちなら一度は考えたことがある、『生きる意味』とか『生きる価値』はここに全部あります。良かったね」


ルーラの話を聞いているとこの世界は俺たちにとって魅力的すぎる世界に見える。裏があるのではと疑ってしまうくらいには。


「ルーラさん。この『ミッション』をクリアした人は今まで何人いるんですか?」


クラスメイトの1人がルーラに尋ねる。


「6人。1人目はこの世界に『魔物』なる存在をあふれさせた。『魔王』が出現したのもこのせいだね。2人目は何をしたかは知らない。3人目は僕。僕は願いで『神』になった。4、5人目は印象に残っていないから覚えていない。そして6人目は君たちをこの世界に連れてきた」


たったの6人。そう反応したいところだが、その先にもっと重要な情報に皆驚いている。


「私たちがこの世界に来たのは6人目の願いなんですか」


クラスメイトの1人が確認する。


「そうだよ。正しくは『別世界の平和で平凡なつまらない日常を送っているくせにそのことに気づいてすらいない、羨ましい馬鹿な奴らをこの世界に引きずり下ろせ』だったね」


なんだろう。6人目からは明確な嫉妬を感じる。


「君たちにとってはいい迷惑かもしれないけど、来ちゃったのは仕方がないことだしこの世界を楽しんでね」


ルーラは思い出したように話を続ける。


「分かっていると思うけど、一部の『能力』を除いて普通、死んでも生き返ることはないから。君たちの生きていた世界は知らないけど、死なないように気を付けてね」


ルーラは他に質問があるか聞くが、次はだれも何も言わなかった。


「じゃ、転生特典として1人あたり金貨10枚分置いていくから、仲良く分けてね。じゃあ、解散!個別に何か聞きたいことがあればこの城の最上階に来てくれれば僕に会えるよ」


金貨1枚は日本円にして1万円くらいとも説明して、てルーラは部屋を出ていった。




「お前の能力なんだった?」


部屋を出ると数少ない友人、時止太陽ときとめ たいようが話しかけてきた。


「まだ、確認していなかったな。お前はどうだったんだ?」


「俺か?俺は最大5分時間を止めることができる能力だって。連続使用はできないみたいだけどな」


強そうだ。俺もそんな能力が欲しい。そう思って自分の能力を見てみる。


混沌の極みエクストリームカオス:これは誰にも予測できない】


なんだこれ。ふざけてんのか。


「どうだった?強そうか?」


太陽が興味津々で聞いてくる。


「えーっと、分からない。翻訳が不十分なクソゲーみたいな文章で書かれているんだが」


「どういうことだ」


「『これは誰にも予測できない』としか能力説明が書かれていない」


「じゃあ、とりあえず使ってみたらどうだ。外に出たら自由に使っても大丈夫だろう」


太陽の提案に乗り、城から出てとりあえず使ってみることにした。


「・・・どうやって使うんだ?」


「俺の時は使いたいと思えば使えたぞ」


太陽に言われた通りに『混沌の極みエクストリームカオス』を発動したいと念じる。


(そうか・・・我を使いたいか・・・いいだろう少しばかりお前に力を貸してやろう)


そんな声は聞こえたものの、何も起こらない。


「どうだ、何か変わったか?」


太陽には聞こえていないのか、俺に使用感を聞いてくる。


「なんか、力を貸してやろう、って聞こえたんだけど何も起こらないんだけど」


「ならもう一度使ってみたらどうだ」


太陽に言われるがまま、もう一度使いたいと念じる。


(なんじゃ・・・発動は成功しておるぞ・・・というより何度も発動せんでよい・・・一度発動すれば基本そのままじゃ)


「どうだ、何か変わったか」


「いや、声が聞こえるだけで何も起こらない」


「じゃあもう声に話しかけてみろよ。俺の異能は何かって」


「分かった。なぁ、俺の異能は何なんだ」


(説明を見て分からぬのか・・・馬鹿じゃのう・・・文字通りじゃ・・・誰も『予測できない』ことが起きておるじゃろう・・・能力が発動せんとか能力がしゃべりだすとか・・・何か現実に影響を及ぼすと思っていたじゃろう・・・じゃから我が話すだけじゃ・・・予測できんかったじゃろう)


そういって能力は高笑いを始めた。なんだコイツ。


「太陽、ダメだこの能力は。今は何もできない」


「そうか、残念だ。ところでこれから一緒に行動するか?俺はお前と一緒でもいいけど、お前1人で自由に行動する方が好きだろ」


「そうだな・・・別行動にするか。今は能力をロクに発動もできないから、迷惑をかける気もするし」


「じゃあ、またいつか会おうぜ。絶対に死ぬなよ」


そう言って太陽はどこかに行ってしまった。さて俺はどうしようか。




とりあえず、冒険者ギルドがあるみたいなので冒険者になってみた。定番だろう。チンピラに絡まれなかったのは残念だが、勝てる自信もないので良かったと考えよう。


「そのままクエストを受けていかれますか」


冒険者登録をしてくれた職員がクエストの受付もしてくれるようだ。


「どんなものがありますか」


「おすすめはこれらです」


職員が渡してくれたクエストにはこう書かれていた


【難易度:星2 街はずれのゴブリンをできるだけ多く倒そう】

【難易度:星1 指定の場所の土を1kg運ぼう】

【難易度:星99 魔王軍幹部を1体倒そう】

【難易度:星3 魔石を多く回収しよう】


「あの、とんでもないものが1つ混じっているんですが」


「星1のクエストですか?そのクエストは鉄などを作るのに大切ではあるのですが、地味で報酬も少なく人気のないクエストなっておりまして、ぜひとも受けていただければ、と」


「なるほど、それは大変だな。じゃあ・・・じゃなくて!このクエストだよ」


【難易度:星99 魔王軍幹部を1体倒そう】と書かれたクエストを見せつける。


「そちらは成功すると名誉と高額の報酬、運が良ければ貴族の方との縁も手に入る、大変人気なクエストとなっています。現在1万をこえる方が受けていらっしゃいます。ただ難点として成功者がなかなか出ないです。少なくともこの街では出たことがないですね」


「そりゃそうだよね。魔王軍幹部ってなかなかの難易度でしょ」


「でも皆さん、喜んで受けていらっしゃいますよ。ほとんどが自らの意思でお受けになっているようです」


この世界にはバカしかいないのだろうか。


「クリア後に、クエストを受けることも可能ですのでそちらでも構いませんが、いかがなさいますか」


「そんな便利な機能があるならそうしてもらおうかな」


「了解しました」


そう言って俺はギルドを出た。




街を一通り歩き、装備などを整えて街から出ることにした。そして少し歩くと、人型で緑色のいかにもゴブリンです、というような奴が出てきた。


「とりあえず、倒してみよう」


そう言って買ったばかりの剣を振り上げる。しかしゴブリンに受け止められてしまった。


(お主・・・驚くほど戦闘が下手じゃのう・・・)


うるさい。もう一度振り上げる。しかしまたゴブリンに受け止められてしまった。


(剣の1本も扱ったことがないのか・・・無能じゃのう・・・)


「なんだ、その言い方は。お前なら扱えるというのか?」


(無論じゃ・・・我にかかれば剣の1本や2本・・・簡単に扱えるわ・・・我を呼んでみるがよい・・・)


「そこまで言うなら、やってやるよ『混沌の極みエクストリームカオス』!」


そう唱えると靄が現れ、ゴブリンに襲い掛かる。靄が晴れた時にはゴブリンは四肢が外れバラバラになっていた。


「嘘だろ」


・・・あれ?よく考えれば剣を使っていなくないか


(・・・騙されおったのう・・・剣を扱うと思っていたじゃろう・・・残念・・・いつの間にかバラバラにするだけじゃ・・・)


そして高笑いを始めた。なんだこいつは。


(どうだ・・・分かったか・・・これがお主の『能力』にして我の『能力』じゃ・・・お主を含めた誰も予測できない『能力』になる・・・それが我じゃ・・・)


また高笑いを始めた。こいつは高笑いをしなければ死んでしまうのだろうか。しかし、とりあえず自分の『能力』については分かった。


俺がこんな感じになってほしいとか、誰かがこんな効果だろうと思えば、それ以外の効果に変わる。


「・・・超使いづらいじゃねぇか!」


思わず叫んでしまった。



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異世界転生モノを書いてみたいという単純な欲望から生まれたモノですが、よろしくお願いします。

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