青信号無視

青信号無視

両方の靴を飛ばしたぶらんこに座り尽くせば大人になれる？

通るたび取り壊されてゆくビルをコマ送りして朝の５号車

吊り革に頭ぶつけて席譲るひとの痛みを譲ってもらう

大袈裟に言う「うれしい」は「うるせえ」に聞こえる　夏はそんな眩しさ

青信号無視して立ち止まる俺に鬼蜻蜓から切られる切符

俺のあとマイナス100人来てたんだ呼出番号見てカフェを出る

20人が男ひとりを改札で見送る　そこだけ異世界として

ユーザー名「わかんない」にしてからずっとわかんないまま戦っている

俺よりも安い肉だけ置いてあるスーパー今日も確かめにゆく

ドアノブに珈琲のせて探す鍵昨日の俺の居留守を暴け

完成したパズルは微かに膨らんでみんな辞めたいと言えないのだな

決意とか無いまま終える平日のシンクに死んだコーラを流す

深海の底が案外あかるくて後悔しないために人間

前をゆく光が消えたらたかみなが「 AKB〜！」と叫んでくれる

美容院の鏡の前に催眠のように置かれたマスクスタンド

羽蟻飛ぶ駅前広場ポケットの電池が薬莢みたいに鳴って

そこに血が通っているのかパーカーのフードは永遠に乾かない

手花火の涼しげな火を掴もうとして掴まれる　ぬるい光に

真っ暗な夢でもずっと憶えてる月下美人の香りがしたから

埼玉のなかの市バスということを忘れて海の話がしたい