♯03 ブラックおばあさん
むかつく。
むかつく。
何もかも。
いや。
いやいやいや。
うんざりなんだってば!
何十年もつれ添ったのに。
貴方の横柄な口調は変わらない。
おまけに。
今日は私の誕生日。
もう。
嬉しくない年齢だけど。
それにしても。
「お前も歳をとったなぁ・・・」
は。
無いんじゃない?
デリカシー。
夫の辞書には存在しない。
何を言っても通じないから。
私は買い物に出かけた。
定年を迎えた夫は。
毎日、家にいて。
息が詰まる気がするから。
スーパーでの買い物も。
私にとっては息抜き。
そんな時。
交差点で信号を待っていたら。
猛スピードの車が通り過ぎて。
私はのけぞり転倒しそうになった。
ふわりと。
身体を抱き留められた。
振り向くと。
可愛い高校生らしきお嬢さんがいた。
「ありがとうね・・・」
咄嗟に出た声に彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「い、いいえ・・・」
彼女は赤くなった顔を見せないよう囁くように答えた。
そのまま手を引いてくれて。
二人で横断歩道を渡った。
「ありがとうね・・・」
何度も繰り返す私の声に。
彼女は戸惑いながらも。
手を振りながら駅へと向かった。
私の口元は。
いつの間にか微笑みを浮かべていた。
※※※※※※※※※※※※
「遅かったじゃないか・・・」
ふてくされた顔で夫が呟いた。
ムッとした私が言い返そうとしたら。
テーブルの上にケーキの箱が置いてあった。
甘いクリームの香りが。
何だか心地よくて。
「これ、買ってきたの?」
私はオゾオズと尋ねた。
「誕生日だから・・・」
拗ねたような答えに。
私の胸は。
少し、熱くなったのでした。
Black Women 進藤 進 @0035toto
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