稚児に風重し屋台の風車

「こら、あんまり遠くに行っちゃったら迷子になるわよ」

「ふふふ、へへへ、ははは」

 わたしはまだ5歳くらいの息子と一緒に、縁日に来ていた。

 それにしてもまあ子供は元気である。体はちっちゃいくせにエネルギーは底なしのようだ。縁日だから興奮しているのかもしれない。

 金魚すくい、射的、きゅうりの一本漬け・・・・・・

 実にいろいろな屋台が出ていて、とても賑わっている。


 わたしは風車を買ってあげた。これを掲げて走るとくるくるとまわっていく。


 くるくるくる、くるくるくる


 どこまでも回る。エネルギーは尽きない。

 息子は風車を回している。まだ5歳の息子。


 彼も、ちょっとずつ大人になってゆくのだろう。その頃には、わたしはもうお婆ちゃんだけど。


 でも今は、風車を回している。


 かれの玉のような手に、風車を通して振動が、風の重みが伝わる。風がくっと棒を押し付ける。

 プラスチック製の、ぺらぺらした羽をもつ風車かざぐるま

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一晩中ゐた東屋に花薊 しとらす @citrus323

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画