第2話 なんか学校行けって言われた
てことで入ってしまいました王城。キャッスル。Castle。
うん、すげぇな。キレイだな。
なんか胃痛が和らいできたなぁ。
「おい!お前か勇者様の仲間の付与術師か!」
「……」
うん、胃痛が再発してきたな。
てかなんで知ってるの?
後で知る事だが、この世界はアホほど情報伝達が早い。魔道具がすんごい優秀なのである。
それに転移の魔道具もある。
騎士さんがあんな辺境の村にいたのもそれを使ったからだ。
儀式を受ける時に騎士が優秀な人材をスカウトしに来るのだ。
この世界は実力主義なのだ。
因みに王都までが馬車だったのは魔道具が一回きりだからだ。
そして僕は三日も眠らされてた。
まぁそれは良い……いや良くないわ。
ふざけんなよマジで。
「誰アンタ」
「なっ!俺はこの国の第三王子のマルクだ!」
「あっそうなんですか。行きましょう騎士さん」
「え、は、はい」
「ティスさん?王族ですよ?そんな態度で大丈……」
「フッざけんなよこのクソ勇者!」
「ほらキレた!最初は僕にキレてたのにいつの間にか標的がティスになってやがる」
「そうだ、こんな女が勇者なわけないんだ!おい、俺と勝負しろ女勇者!」
「やだ」
「───っ!!!」
口をパクパクさせた王子を置いて、僕らはその場を去った。
な、なんかごめんよ第三王子よ。
僕たちは1人の騎士さんに連れられ謁見の間にやってきた。
扉でっかぁい。
なんか身体は子供頭脳は大人の死神探偵のアニメに出てくる扉みたいだな。
キイイイィィ
扉が開かれ、僕らは中に入っていく。
The玉座って感じのイスには白髪が少し混じった金髪のゴツいおっちゃんが冠かぶって座っている。
少し歩いたところで騎士さんが膝をつき、頭を下げたので僕らもそれにならって頭を下げる。
「よい、顔を上げよ」
その声で僕は顔を上げる。
「さて、勇者よ。お主にはこれから王立学園に通い、力を付けてもらうのだが……その条件がそこの少年の入学だったな?」
「え」
「はい!」
「ちょっとまって聞いてないんだけど!?」
「おい!無礼だぞ!」
「はひっすみません!」
「よい。まだ子供だ。さて少年よ、名は何と言う」
「レイジです!」
「そうかレイジか。勇者と共に世界を救う気はあるのか?」
「ありません!!」
「……」
「あ」
し、しまった!つい本音が!
流石にマズイ……っ!
「い、いえ!あります!」
「あっはっはっは!!面白いじゃないかレイジ!よし、レイジの入学も許可しよう。金は必要ない」
「あ、ありがとうございます!!」
ぜんっぜん嬉しくないけどな!
なんで僕が学園に通うはめになってるんだ!?
僕を巻き込むんじゃねぇよティス!
てかなんでこっちの世界でも学校いかなきゃいけないんだよ!
僕はダラダラ冒険者やって生きてくつもりだったのに!
「まあそんな嫌そうな顔をするなレイジよ」
「あっやべ顔に出てた」
「言い方は悪いが、お前は勇者を……ティスを学園に行かせるための道具のようなものだからな。別に授業に出なくても良いぞ?」
「マジ!?」
「マジである。一回も授業に出なくても卒業させてやる」
「マジであるか!ありがとう!じゃなくてありがとうございます!!」
「うむ。ではもうよいぞ」
僕らは謁見の間を後にした。
いやぁーいきなり学校行けとか言われて焦ったけど、王様から行かなくても良いって言われたし、引き籠もってやろー。ガッハッハ!
「てかティスよ。なぜ僕を巻き込む。やめてくれないか」
「え?レイジも学校行きたいかと思って……」
「いつそんな事言った?そういうのをな?ありがた迷惑って言うんだよ?」
「ご、ごめんなさい……」
「〜〜っ!そんなうるうるしないで!僕の良心が悲鳴をあげてる!」
「レイジに良心なんてあるんだなぁー」
「お前ぶっ飛ばすぞ?さっきまでの涙はどうした」
なんなのこいつ。情緒不安定なの?
いや、今の場面だと僕の方が情緒不安定か?
「まあ、本音を言うとだな……」
「おう、言ってみろよ」
「レ、レイジと一緒にいたかったから……だ」
「ごっふ……!」
こ、こいつ……顔が良いから破壊力がぁ……っ!!
つい顔がニヤけてしまう……っ!!
「ま、まぁ?許してやっても?良いぞ?」
「チョロいぜ」
「おい今チョロいぜって言ったよな?バッチリ聞こえたぞ?」
「言ってないよ?」
「そっかー言ってないかーってなる訳ないよね?しっかり言ってたでしょ?」
「でもチョロいのは事実じゃん」
「くっそ否定できねえ」
「お前たち仲いいな……せめて城を出てから騒ぎなさい」
「「すみません」」
騎士さんに笑われながら注意された僕らは城を出るまでは無言で歩いていった。
そして城を出て、これからどこにいけば良いんだろうかと考えていると、また馬車に突っ込まれた。
もうちょっと丁寧にやってくない?ねえ、ひどくない?
ティスには丁寧のくせに……。
「これからどこいくんですかー?」
「学園の寮だ。お前たちにはそこで生活してもらう」
「寮生活か……一人部屋ですか?」
「いや?相部屋だ」
「マジかよ……」
「騎士さん、私とレイジって同じ部屋?」
「いや、勇者様は女子寮なので……」
「そっか……レイジと一緒の部屋が良いんだけど」
「はあ!?」
流石に女子と同じ部屋はちょっと……それにティスと一緒の部屋とか絶対うるさい!
「分かりました。そのように連絡しときます」
「しないでよ!そこは止めてよ!ねえ、僕がティスにあ〜んなことやこ〜んなことしたらどうすんの!?」
「はっはっは坊主、お前では勇者様には勝てんぞ。襲ったら逆に倒される」
「くっそ否定できねえ」
ティス、勇者の職を得てから力が強くなったんだよな。
力だけじゃないけど、身体能力全般が上がったって感じだけど。
「あの頃のか弱く可愛いティスはいなくなってしまったな……今では立派なゴリラ……」
ヒュッと風を斬る音が聞こえたと思ったら、僕の首にティスの手刀が添えられていた。
いやこっわ。はっや。
「ゴリラがなにか分からないけど、今私、凄く失礼な事言われた気がする」
「す、すみませんでしたもう言いません!」
「よろしい」
「ほっ」
ティスが手刀をおろし、ほっとする。
こいつ、ほんとに強くなったな。
まだ職業を授かっただけなのに……これから色んな技術を身に付けていく事になるだろうから……どんなバケモンに成長すんのかな。
すんごく強くなったら僕の出番は無いな。そうすると僕を諦めて1人で行ってくれるかもしれないな。期待しとこう。
「二人共、着いたぞ」
騎士さんに声をかけられ、馬車から出る。
そこには大きな建物があった。
それが二つ。男子寮と女子寮かな。
え……つまりあれくらいの生徒がいるってことか?
いや、実家から通ってる人がいる事も考えるともっとかな。
凄いな王立学園。
「ついてこい」
「「はーい」」
騎士さんに案内されたのは……女子寮だった。
「いやおかしいだろ!!!!!」
「うるさいなぁお前」
「いやうるさいなぁじゃないですよ!なんで僕女子寮なんですか!?こう……ちょっとした小屋とかじゃ駄目なんすか!?」
「勇者様に小屋はまずいって。勇者様と同じ部屋になるならこうするしか無いんだって」
「だったら僕は男子寮が良いんですけど!?てか元々ティスと一緒の部屋とか嫌なんだけど!」
「え……いやなの……?」
「違うごめん!いやじゃないから!もうここで良いから!!目をうるうるさせながら拳をあげないで!!!」
マジで怖いんですけど!?
僕のこのぼっろい服にも色々付与はしているが生身の防御力はペッラペラなんだよ。
そのまま顔いかれたらワンチャン頭吹っ飛ぶぞ。
「もう良いかい?」
「あっすみません騒いでしまって」
「あぁいえいえ。元気なのは良いことだからねぇ。はいこれ、鍵ね」
「どうもありがとうございます」
「よーしレイジ!私達の愛の巣へ行こう!!」
「愛の巣言うな!どこで覚えてきたそんな言葉!?騎士さん!またいつか会いましょーう!」
「お、おう……元気でなー坊主!」
僕は騎士さんに手を振りながらティスに部屋まで引きずられた。
しかもこいつ容赦無い。普通に階段も引きずりながら登りやがった。
自分で歩くって言ってんのに無視して登りやがった。
なんだこいつドSか?僕はドMじゃないんだよ!目覚めたらどうすんだ!
「お、お前マジ許さん……」
「どうしたんだレイジ。何かあったのか?」
「一発殴って良いか?良いよな?これ、良いよな!?」
「え……レイジは女の子を殴るの?」
「ぅ……で、デコピンで許してやる」
「ふっチョロ」
「お前マジでグーで行くぞ」
「まぁグーできてもレイジの拳がイカれるだけだけどね」
「……た、確かに」
そういえばこいつ、勇者だったわ。
こんなやつだけど、勇者だったわ。
幼馴染の尻を容赦無く破壊する勇者だったわ。
くそぅ!仕返しすらまともに出来ないのか!
「泣きたい……」
「あっはっはっは!」
「殴りたい、この笑顔……」
でも殴れない……と僕は呟いた。
僕の幼馴染は勇者様〜え?共に世界を救おう?いやだ!僕はそんな危険そうなことしたくないんだ!……ってやめろ!?引きずるなぁ!!〜 九城オウカ @mtzksum0401-
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