僕の幼馴染は勇者様〜え?共に世界を救おう?いやだ!僕はそんな危険そうなことしたくないんだ!……ってやめろ!?引きずるなぁ!!〜

九城オウカ

第1話 僕と幼馴染


 辺境の、小さな村の村人Aである僕、レイジは転生者だ。

 前世はちょっと怠け癖のあるオタク。将来の夢は楽して金を稼ぐことかヒモになること。

 これを親に言ったらぶん殴られたなぁそういえば。


 まぁとりあえず、僕は地球で火事で丸焦げになって死亡した。

 そして目覚めたらかわいらちぃ赤ん坊に転生していた。

 と言っても僕はよくある俺Tueee!とかしたくはない。だってめんどい。


 転生者って事で魔力量は多いけど、それを誰かのために、とか表舞台にたってそれを使うことはないだろう。

 そんな僕の思いが通じたんか知らんけど、今日受けた【授職の神儀】という職を女神様から授かる儀式で僕が授かったのは『付与術師』。


 味方にバフを、敵にはデバフを与える職業である。

 そしてこの職業、実は結構不遇である。


 だって『剣士』の職業の人は斬撃強化のスキルを使えたり、『盾役タンク』は防御上昇だったりと、自分の身体能力やらを上げれるんだもの。

 それに『付与術師』のバフは自分にはかけられない。


 だからパーティーで行動する必要があるのだ。

 でも別に必要ない『付与術師』をパーティーに入れてくれる所なんてない。

 

 うん、この説明だけ見れば圧倒的不遇。

 だがしかし、僕はちょっと特別なのだ。所謂チートってやつかな?

 僕の付与は人や魔物だけじゃなく、物にも影響を与える事が可能だ。


 つまり、自分の武器や防具を強化することが可能。

 これでソロでも冒険者として活動が出来る。


 確か職業は提示しなくても良かったよな。

 よし、職業は隠して冒険者として生きていくか。

 付与の熟練度とかが上がれば効果も上がるだろうから、強めな魔物も倒せるようになるだろう。


 そうすれば一回の依頼で大金が……!グヘヘ。

 まぁそれまでは地道に努力を続けよう。

 僕は夏休みの宿題は最初の1週間以内に終わらせる人なのだ。答えを写してな。


 と、僕が自室で決意を固めていると突然扉が開かれた。

 

「なにやつ!」

「レイジ!なんで先に帰ったんだ!」

「なんだティスか帰れ」

「私の儀式が終わるまで待てと言ったでは無いか!ひどいじゃないか!」

「帰れ!」

「私の職業は『勇者』だったぞ!」

「話を聞けぇい!!!」


 って勇者?

 マジ?そういえば勇者って……なんか本で読んだ気がする。

 ……あぁ、あの本だ。


 タイトルは忘れたが、勇者が誕生する理由が書かれた本があった。

 勇者が誕生して数年もすると世界中にダンジョンが出現する。

 と言っても難易度順に一個ずつらしいのだが。


 それまでに勇者は自らを鍛え、世界を救うためにダンジョンを回る必要があるらしい。

 

「なるほどティスは凄いな」

「そうだろう!」

「じゃあ帰れ」

「それでだな、レイジよ、私に着いてきて欲しいのだ」

「やだ」

「よーし行こう」

「ちょっと待って話聞いてた?耳聞こえてる?都合がいい事しか聞こえない耳なの?えっちょっやめろっ!引きずるな!ぅおい!そこ階段!ちょっ!ちょっとまっ───」


ダンッダンッダンッダンッダンッ


「し、尻がぁー!!!」


 ぼ、僕のSiriが……おっと間違えた。尻が……ボッコボコや。

 


「お前ふざけんなよ!いい加減に離せ!」

「おっレイジと……ティスちゃんじゃないか」

「あっ親父!ちょっと助けてくれ!僕のお尻が危ないんだ!ティスを止めてくれ!」

「お義父様!さっきぶりです!」

「おうティスちゃん、息子を存分にこき使ってくれ」

「うぉい親父ぃ!?息子の尻の危機だぞ!助けろよ!てかお義父様ってなんだよ!」

「行くぞレイジ!」

「達者でなーレイジ」

「てめぇクソ親父!いつかぶん殴ってやるからな!!!てかどこ行くの!?ねぇ!どこ行くの!?」


 僕の訴えは虚しく、僕はティスに引きずられ、連れ去られた。

 そしてティスが僕を運んだのは、馬車だった。

 馬車?出荷でもされるのカナ?


 なんかすんごい強そうな騎士様が周りにいるんダケド……。

 これは一体?


「ティ、ティスさん……?この馬車はどこに向かうのでしょうか……?」

「決まってるじゃない」

「決まってるの!?」

「王都よ」

「王都!?」

「おう坊主、こんにちわ」

「あ、こんにちわ。強そうっすね」

「はっはっはありがとな。お前……将来尻に敷かれるタイプだな」

「は、ははは……」

「すみませーん!出発してください!」

「おうよ!」

「ちょっ!僕は行きたくない!僕はいきたくなーい!」

「……スマンな坊主。勇者様の命令なんだ」

「え」


 僕は騎士さんの魔法で眠らされ、そこで意識が途切れた。


「勇者様、これで良いですか?」

「うむ、ありがとうございます!」

「坊主……同情するぜ」

「勇者様、なぜこの少年と共に学園に行くことを希望したのです?彼、『付与術師』なのでしょう?」

「馬鹿野郎お前、勇者様が坊主の事が好きだからに決まってんだろ」

「そ、そうだな……私はレイジの事が大好きだ。ずっと一緒にいたい。でも、それだけじゃないんです。レイジには、何かがある。私の感がそう言ってるんです」

「そ、そうですか」


 ティスの真剣な表情に騎士達は思わず息を呑んだ。


「んぅ……ここは」

「おっレイジ、起きたか」

「ティスか……はっ!!僕のお尻の破壊神ヒップブレイカー!!」

「なんだその二つ名は」

「お前の行動を見返せば分かるはずだろ。てかここどこだ」

「もう王都に着いたぞ」

「なんだと!?」


 僕はガバッと身体を起こして辺りを見渡す。

 ……圧倒的都会。もう一度言おう、圧倒的都会。

 さっきまでの田舎ーんな雰囲気はどこに行った!?


 人いっぱい、建物いっぱい。そして、騎士がいっぱい。

 お、おーまいがー。


「えぇと……僕死刑なんすか?」

「違う違う違う。落ち着け坊主。ここは処刑場ではないぞ」

「あっそうなんすか。じゃあなんで騎士さんがこんなにいるんすか?」

「勇者様に謁見してもらおうと思ってな。だが勇者様が坊主と一緒じゃないと無理だと言うのでな」

「あーなるほど」


 ティスは僕に懐いてるからなぁ。なんか知らんけど。

 てか謁見?てかここどこ?


 僕は一度馬車を降りて、さっきとは反対の方向を見る。

 そこにはデッカイ建物が。デッカイ……たてものが……。


「お、王城じゃねぇか!!!!!!!」


 つまり今から王様と謁見するって事!?

 フッざけんなよ!ただの村人Aがなんで王様と謁見するの!?展開早くない!?


「ま、頑張れよ」

「っ……」


 胃が痛くなってきた……。


「よし、お二人さん。ついてきな」

「分かりました」

「い、嫌だぁ……」

「ほら、行くぞレイジ」

「分かってるから!もう引っ張んないで!!」


 僕は騎士に囲まれ、ティスに引っ張られて王城に連れ込まれた。

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