第一章 師匠と瞳
というわけで転生してしまった俺は、森に捨てられてしまった。
どうするべきか。
身体は赤ん坊だから動かせる訳もなく、周りからは何か獣の鳴き声も聞こえてくる。
このままでは獣に殺されるか、餓死してしまうだろう。
「なるほど……こういうことか」
ん? 誰だ? 俺を捨てた父とは違った声だ。
先程まで足音も何も聞こえなかったのに……。
「おい、聞こえているだろう。そこの赤子」
赤子……俺のことか?
「ああそうだ」
ッ⁉︎ 心が読めるのか⁉︎
「ああ。まあそれは置いといて……お前、転生者だろ」
あ、ああ。お前も、転生者なのか?
「まあ一応そうなる。俺の場合は少し特殊だが」
なら、助けてくれないか? 俺は見ての通り赤ん坊で、さっき“紋なし”とかで捨てられたんだ。
「安心しろ。元よりそのつもりだ」
そうか……助かる。
「それじゃあ、移動しながらこの世界について説明しよう」
俺は師匠––––そう呼ぶことにした––––に抱えられ、運ばれながらこの世界について聞いていった。
師匠曰く、この世界は魔法やら魔物やらが存在するファンタジーな世界であるらしい。
そして、この世界の生きとし生けるもの全ての瞳には、何かしらの紋が刻まれていると言う。
その紋は刻まれた者の才能や特殊能力を表しており、剣が得意なものは剣の紋が、魔法が得意なものは杖の紋が刻まれるそうだ。
そして“紋なし”と言うのは、その名の示す通り瞳に紋が刻まれていない者のことを指し、世界中で“忌み子”として嫌われ、差別の対象になっているそうだ。
だが、この“紋なし”が生まれてくるのは極々稀で、世界にひとりいるかいないかの確率だそうだ。
にもかかわらず“紋なし”が世界中で嫌われているかと言うと、かつて世界各地で暴れ回り、世界人口の4割を殺し、『最恐の厄災』と呼ばれて恐れられた“紋なし”がいたからだ。
その“紋なし”は14人の“最強”によって倒されたが、その恐怖は500年経った今でも受け継がれ、今でも“紋なし”は“忌み子”として扱われているそうだ。
だが、“紋なし”と言うのは紋がないのではなく、他者が認識できないほど緻密の刻まれた紋を持っているそうだ。
そして、その紋が表す意は、“全能”。
本当に全てを扱える訳ではなく、“全能”の紋以外にも特殊・特別な紋が存在するらしい。
例として挙げると、美徳と大罪。過去の“全能”を倒した14人の“最強”も美徳と大罪の紋の保有者だったそうだ。
そして、俺と師匠のような転生者は他にも存在するらしい。
転生者以外にも、魔法によって召喚される召喚者、偶然この世界に迷い込む転移者などもいるそうだ。
転生者はともかく、召喚者や転移者は紋がないんじゃとも思ったが、都合の良いことにこの世界に渡るときにその人物にあった紋が瞳に刻まれるそうだ。
また、召喚者や転移者は地球からの人物しかおらず、地球以外の星から来る事はないそうだ。
師匠曰く、この世界と地球は同次元に存在しており、この二つの世界は兄弟のような関係らしい。
転生者の場合は、この世界の前世か地球の前世を持つ者がおり、こちらの世界の前世を持つ者の方が多いそうだ。
まあこれが、大まかな世界の仕組みだそうだ。
キミの瞳に刻む才 霞玉兎 @staaoisyuon
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