第33話 後始末
階層ボスが倒されたことで、次のフロアへと降りる階段が開放された。
冒険者たちは我先に向かおうと走り始める。当然だろう、初めてフロアに足を踏み入れる特権は階層ボスを倒し者たちだけの栄誉だ。
次のフロアがどんな階層かを最初に知って、他の冒険者たちに広めながら自慢できるのだ。楽しいに決まってる。
俺も何度も体験したがあれはいいぞ。他の冒険者たちがこぞって聞いてくるからな。
「師匠、ご助力ありがとうございます」
そんなことを考えているとソールレイスが話しかけてきた。
「どうしたんだ? お前も次の階層に行ったらどうだ?」
「行きたいのは山々なのですが。私たちは残った方がいいのでは?」
ソールレイスはこの部屋の入口に視線を向けた。
どうやら彼女は気づいているようだ。
「大丈夫だ。俺が受け持つから行ってこい」
「いいのですか?」
「俺はもう冒険者じゃないからな。階層ボスを倒すだけ協力したが、攻略したのはお前たちの力だ」
「分かりました。ありがとうございます」
ソールレイスはそう言い残して階段を下りて行った。
この部屋に残されたのはゴーレムと俺と、階層ボスの死体のみだ。さて階層ボスを倒せば攻略は終わりというわけではない。
帰るまでがダンジョン攻略だ。死力を尽くして勝利した冒険者たちは、極めて価値の高い階層ボスの死体を持って帰る必要がある。
……物を奪うのが生業の奴らからすれば、これほど絶好の獲物はそうそういないだろう?
部屋の扉が勢いよく開かれて、黒装束の者が二十人ほど入って来た。全員がすでに剣などの武器を抜いていて、
「いらっしゃい。自力で倒そうともせずに、手柄だけ奪おうとするハイエナども」
たまにいるのだ。ダンジョン攻略を終えた直後の冒険者たちを狙うクズ達が。
階層ボスを倒せる冒険者は強者だが、それでもボロボロの状態での連戦は厳しい。そこを狙う卑怯者たちがこいつらだ。
「悪いが死んでもらう」
黒装束の奴らは俺に襲い掛かって来たので、
「ライトニング・ジャッジメント」
大規模雷魔法を唱える。すると巨大な雷が俺の前方を埋め尽くして、黒装束を残らず塵にした。
「やれやれ。ここまで来れる実力があるなら、階層ボスに挑んでくれたらよかったものを」
生け捕りという選択肢はない。そんなことしたら街の負担になるし、こんな奴ら生かしておく必要もない。
それに階層ボスまでたどり着けるなら、それなりの実力を持っていることになる。そんな奴らを下手に捕まえて逃げられたら面倒だ。
なのでこういう奴らを消し炭にするのも市長の仕事……ではないな。まあ追加サービスみたいなものではある。
「さてと。素材を運ぶ準備でもしますかね」
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俺は冒険者たちと一緒に都市に戻ると、急いで屋敷へと駆け込んだ。
「エリサ! 急いで攻略記念パレードを開け! それと各都市にプラチナウムドラゴン討伐の報告を! 後は素材オークションの開催、記念祭、他都市に戻る冒険者の馬車の手配に……」
「やることが多すぎるのです!?」
「当たり前だろ! 冒険者たちが最も大変なのが階層ボスなら、俺たちは倒された後だ!」
そうして俺たちは駆け回って、様々な手続きを行った。
まず攻略記念パレードだ。俺も討伐に参加したが時間がないので、代役でゴーレム君に出てもらうことにした。
俺の名前を書いた木札を持たせたゴーレム君は、若干シュールな光景だったらしい。
次に各都市にプラチナウムドラゴン討伐の報告を行う。これによって各都市の大商人や町長などが、素材を目当てにこの都市へとやって来た。
プラチナウムドラゴンの素材は高すぎるので、そこらの商人では扱えないのだ。なので必然的に有力者を集めることになる。
そして綺麗な青空が見える素晴らしい会場でオークションが開かれた。
「オークション会場、作るの忘れてたのです」
「どうせ普段は使わないから、陣幕張り巡らせた場所で問題ない」
「市長! 盗賊が出ました!」
「はいはい。ちゃんと雷魔法で罠張ってるから大丈夫だ」
予定通りオークションにやってきた盗賊を消滅させて、今度は都市のお祭りが始まった。ドラゴン階層攻略祭だ。
広場ではドラゴンの肉が多くの露店で売り出されて、これまた無事に大盛況だ。
「この【熱き黒鉄の漢たち】が、ドラゴンを倒したリーダーだぜ!」
「流石はバングの兄貴たちだ!」
「兄貴! 兄貴! 兄貴!」
「おらぁ! 今日は俺たちのオゴリだおらぁ!」
なんか一部で変な盛り上がりをしていたが、まあ特に事件も起きなかったので問題なかった。そうして無事に祭りは終わって、出稼ぎに来ていた冒険者たちもそれぞれの都市に帰っていった。
なにはともあれ、ドラゴン階層のことはこれで片が付いた。
俺とエリサは屋敷の執務室で、最後の後処理決算を行っている。
「市長! 集計終わりました! 今回のドラゴン階層ですが大黒字です! 金貨三千枚分の儲けです!」
「おお! やったな!」
すごく大変だったが無事に儲けることが出来た。これなら次のドラゴン階層に当たるまで、問題なく都市を経営できるだろう。
「じゃあお疲れ様の乾杯だ。とっておきの酒を出すぞ」
「いただきます!」
俺とエリサは木のグラスに酒を入れて、乾杯をする。
「お疲れさまだ。明日からもまた頑張るぞ」
「はいです!」
俺たちは酒を飲み干して気分よく眠った。きっとこれからも大変なことはあるだろうが、今後もなんとかなるだろう。今回の金貨三千枚の儲けはそれほど大きかった。
ダンジョン都市は先が読めないが、それでも夢のある場所なのだから。
そう……ダンジョン万歳!
――そうして三か月が経った。
「市長! 大変です! またアンデッド階層です! これで三階層続けてアンデッド階層です!? 貯金がもうありません!?」
「死ね! ダンジョン死ね!」
前言撤回! ダンジョンは最低の場所だちくしょう!
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少し投稿するの遅れましたが最終話です。
残り2話と言いましたが、普通に1話で終わりました。
少し駆け足でしたが、綺麗に終われた気はしています。
それと新作の宣伝をさせてください。
『ロボットでダンジョンを攻略する日本になったけど、俺だけは生身で無双する ~巨大モンスターを生身で倒していたら、世界最強の探索者になっていました~』
https://kakuyomu.jp/works/16818093081728805550
次は現代ダンジョンになります。
巨大魔物が出てくるダンジョンをロボットで攻略する世界ですが、主人公だけ生身で無双する話です。
この作品で考えたダンジョンのことも活かしつつ、面白い話になっています。
よろしければいかがでしょうか。
最後に。
最終話まで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました。
ダンジョン都市の市長ですが、都市経営はなかなか大変です! ~ダンジョン攻略のために都市を発展させて、強い冒険者を揃えていきます~ 純クロン @clon
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