第32話 戦闘


 プラチナウムドラゴンは吠えながら、長い尻尾をソールレイスに向けて叩きつける。


 だがソールレイスは地面を蹴って避けて、さらにカウンターで尻尾を剣で切りつける。だが硬い鱗に纏われている尻尾は無傷だ。


「想像より硬いですね。力を二割ほど上げれば斬れますが」


 ソールレイスは相変わらず淡々と分析するなあ。


 するとプラチナウムドラゴンは俺に視線を向けてきたので、手をヒラヒラさせて振ってみる。


「隙ありだオラァ! 俺様たちの一撃を受けてみやがれぇ!」


 山賊三人衆、じゃなくて【熱き黒鉄の漢たち】が斧を振り上げて突撃していく。


 だがプラチナウムドラゴンは彼らの方を見もしない。脅威と認識されていないようだが、


「ドラゴン風情が俺たちを舐めるんじゃねえ! 喰らえっ、鱗削りっ!」


 山賊三人衆はドラゴンの鱗を斧で斜めに抉り、何枚かを削ぎ落とした。


 プラチナウムドラゴンが厄介な理由は、魔法すら無効化する強靭な鱗だ。逆に言えば鱗さえなくなればそこまで強くない。


 あいつらやっぱり器用だよなあ。見た目に反して。


 さらに山賊三人衆とソールレイスが、プラチナウムドラゴンに切りかかろうとしたところ。


「魔法で支援します!」

 

 さらに追放者ルメスちゃんが、ソールレイスや山賊三人衆に強化魔法を唱える。


 彼女のやったことは簡単なことのように見えるが、最適なタイミングで魔法を使うのは案外難しい。


 ソールレイスの振るった剣は、プラチナウムドラゴンの鱗ごと肉を切り裂いた。山賊三人衆は先ほどよりも多く鱗を削いでいる。


「ルオオオオオォォォォォ!!!!」


 プラチナウムドラゴンも脅威と感じたのか、暴れてソールレイスたちを引きはがした。そして先ほど強化魔法を唱えたルメスちゃんに狙いを定める。


 なるほど、最初に弱いけど厄介そうな奴を狙うか。だがそれを防ぐために俺がいる。


 俺はゴーレムを操って、プラチナウムドラゴンとルメスちゃんの間に入らせた。


 するとプラチナウムドラゴンが尻尾ビンタを繰り出すが、ゴーレムが両手でそれを防ぐ。パワーだけならゴーレムはかなり優秀だ。


 ルメスちゃんが俺の方を向いて頭を下げてくる。いい子である。


「あ、ありがとうございます!」

「気にしないでくれ。それより強化魔法で支援を続けてくれ」

「はいっ!」


 その間にも戦闘は続いている。【闇夜の竜殺し】のリーダーが吠えながらプラチナウムドラゴンに斬りかかる。


「受けろやぁ! ドラゴンスレイヤーを!」


 彼の持っていた剣が輝いたかと思うと、プラチナウムドラゴンの鱗をスパッと切り裂いた。


 【闇夜の竜殺し】の由来は、彼の持つドラゴンスレイヤーという剣だ。その名の通りドラゴンに対して有効な一撃を放てる。


 ……まあソールレイスの一撃の方が効いてそうだけどな。そこは地力の差ということでひとつ。


「おっしゃあ! 一気に畳みかけるぞオラぁ!」


 山賊リーダーのバングの咆哮と共に、前衛たちが一斉にプラチナウムドラゴンにとびかかる。


 プラチナウムドラゴンが近づかせまいと暴れ狂うと、


「しゃあ! お前らちょっとだけ距離を取れ! あいつが暴れざるを得ない位置をキープするぞ!」


 バングが見事な指揮を繰り出した。あの巨体でそんな動きを続けられるわけがないので、スタミナが尽きるのを待つのだろう。


 そうして前衛たちが少し圧をかけながら包囲していると、プラチナウムドラゴンは息を切らせて動きを止めた。ばてたようだ。


「おっしゃあ! 行くぞてめぇら! 俺に続けぇ!」


 改めてバングたちが突撃する。今度もプラチナウムドラゴンは暴れ始めるが、先ほどに比べるとだいぶ動きがおしとやかだ。


 その程度の暴れではそこらの冒険者ならともかく、ここにいるメンバーには通用しない。


「お疲れのようですね。では永遠に眠らせてさしあげましょう」


 ソールレイスがプラチナウムドラゴンの目を剣で潰し、


「「「必殺! 熱き黒鉄の漢たち!」」」


 山賊三人衆が斧を土色に輝かせながら、鱗の剥がれた部分を切り裂いて、


「竜殺しの剣を受けろやぁあああ!」


 【闇夜の竜殺し】のリーダーがプラチナウムドラゴンの腹を切り裂いた。これは勝ったな。


 もうプラチナウムドラゴンは片目が使えず、大量の血を流して、さらに疲れ切っている。ここまで来れば後は……、


「よしっ! あとはゆっくりと料理するぞ! 少し距離を取って無理はせずに攻めるぞ! もう勝てるんだから無理はするなよ! 市長、あんたのゴーレムを主軸にするぜ!」

「あいよ」


 バングの指示の下、持久戦でなぶり殺しにするだけだ。カッコよくトドメを刺さないのかって? そんな無駄に危険を冒す必要はない。


 ゴーレムを主軸にするのは、万が一があっても誰も傷つかないからだ。実に的確な判断だと思う、まじであいつ山賊頭領の才能あるな。


 そうして一時間ほど距離を取りつつ、なるべく安全に戦っていると、


「ルオオオオォォォォォ……」


 プラチナウムドラゴンはとうとう力尽きて倒れた。


 あっけないようにも思えるが、メンバーを完璧にそろえたのだからこんなものだ。むしろ番狂わせがあったら困る。


 勝つべくして勝つ。それが出来るのが優秀な冒険者であり、ダンジョン市長が目指すべき攻略だ。


「俺たちの勝ちだああああ!」

「「「うおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」」



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あと2,3話で完結予定です。

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