第13話 大胆・可愛い・お嬢様
「やっぱ、日本のお弁当超最高〜!」
ミミナは大声をあげて両手を万歳する。バックでアメリカの国家が流れているような気がしたが、彼女が嬉しそうなのでよしとしよう。
俺たちは稔の机に椅子を持ち寄ってそれぞれ弁当を広げている。稔とミミナが向き合わせで座り、俺は二人とは直角の位置に座っている。
「アメリカは弁当ないの?」
稔の質問にミミナは左の口角だけをあげて、まるでハリウッド女優みたいに皮肉な笑顔を向ける。
「うちの両親はもちろんこういう美味しいお弁当作ってくれたよ? けど私が嫌がってアメリカ風のランチにしてもらってたんだ〜」
「アメリカ風のランチ? 稔知ってるか?」
「動画で見たことあるかも。スナック菓子とフルーツとチーズ、あとサラミをジップロックに詰めて、謎の色の謎のパックジュースを持たせる的なやつ」
「正解〜。人によってはりんご一個だったり、知育菓子みたいな甘いサンドイッチが作れるキットだったりするよ。みんなそんな感じだからさ、こういうお弁当持っていくと虐められるか、人気で奪われるかのどっちかだったんだよね」
と言いながらミミナは俺の弁当の中に入っていたウインナーを勝手につまんで食った。
「おい、メイン」
「うんまぁ……。圭、おにぎりもちょうだい」
「それはダメ」
「じゃ、こっちだ」
ミミナは稔のおにぎりを奪うとパクッと頬張った。
「こら、ったく強欲さまで海外級かよ〜。圭、そういえばミミナってお嬢様なのにやけに男の子っぽくてこんな感じだったよなぁ。駄菓子屋で買ったお菓子もこうやってよく取り合いしてたよなぁ」
「懐かし……あっ!」
ミミナは俺の弁当から今度は卵焼きをつまんで食った。その上俺が食い途中で手に持っていたおにぎりに食いついたのだ。
間接キス……なんてドキドキしている間に指にふわっと暖かい感触。彼女が俺の持っているおにぎりにもう一口食いついた瞬間、指が彼女の唇と舌に触れたのだ。
「へへ、油断したね」
「太るぞ、ミミナ」
俺は関節キスと手に触れてしまった唇のドキドキを隠すために憎まれ口を叩く。けれど、ミミナは小さく舌なめずりをすると
「あ、圭ったらレディーになってこというのさ。まぁ、アメリカじゃそもそも太っていても痩せていても好きな子には素敵だねっていうのが紳士よ」
と可愛らしく言い返してきた。
「そうかい、レディー」
俺はそう言いつつミミナの弁当からミートボールを奪って口に入れた。多分高いやつだ、うまい。
それを口火に俺らたちは際限なくそれぞれの弁当を突っついて食いたいものを食った。なんとも楽しいランチ、弁当が空っぽになるころには時間が十分に過ぎてしまっていた。
死ぬほど笑って、懐かしんでまるで小学生の頃に戻ったような気がした。けれど、高校生になった俺は少しだけ、ミミナにドキドキしてしまっている。大胆で可愛くて飾りっ気のない彼女、超が着くほどの由緒正しいお嬢様なギャップがまた彼女への好感度を上げていく。
そしてなにより、俺と稔とミミナは幼馴染なのだ。
「じゃあ、連絡先交換しよっか。グループチャットね」
ほぼ強制的にスマホを奪われた俺と稔は連作先交換をただ見守った。ミミナのアイコンはもちろん彼女の顔で、海外の女の子っぽい口を尖らせドヤ顔でポニーテールを触っている顔のドアップだ。
なんというか、海外ドラマの学園ものに出てくるチアリーダー感がすごくある。
【大好きな2人とミミナ♡】
そんなグループ名に俺と稔は顔を見合わせてププッと吹き出した。
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