余命35000000000000億万字。
おれは死ねない。死ぬことができない。
故にこの不死身性を活かして、自分の人生に彩りを加えるべく、様々な活動を行った。
色んなことを試した。色んな人を傷つけて、色んな人を救った。ドラマチックな展開だってあった。
だが、それでもおれは死ねなかった。
あんなにもたくさんの経験をして、こんなにも輝かしい功績をあげたというのに、こうやって、作者が300字程度に納めてしまったものだから、雑に略されてしまった。
一番大事なのは作者のモチベーションだった。
おれはそのことに気付かずにいた。
...
作者がやる気をなくしてしまった。
すっかり年老いてしまったおれは活動することなく、家にずっと引きこもっている。
天井を見つめている。
虚空を眺めている。
身体は老いて、生きる意味なんてわからず、ずーっと口を開けている。
天井が水漏れしている。
おれはそれを口を開けながら、垂れてくるのを待っている。
呼吸を止めようが、食べ物を摂取しなかろうが、おれは死ねない。
あの診断をしてくれた医者は遥か昔に死んでしまった。
もうおれのことを覚えている人間なんて誰もいない。
…
たくさんの歴史を見てきた。
何度、同じ悲劇を人間たちは繰り返すのだろうか。
どんどん情報化されていく世界を横目に、おれは文明の進化と人間の衰退を曇ったまなこで見つめている。
宇宙は何故誕生したのか。
おれは何故生きているのか。
神は本当に実在しないのか。
ここ数十年はそんな哲学的なことばかり考えている。
…
もはや人類は次のステージに行くべきなのかもしれない。
身体などというのはただの借り物に過ぎず、ワタシという個体も世の中には実在していなかった。
今や、己は思考するだけの入れ物だ。
…
もう誰も描いてくれないのかもしれない。
...
あまりにも長すぎる歳月が流れた。
それでも、ワタシは死なずにいる。
誰か、誰か、誰か。
これを読んでいる君たちに告げる。
どうか、どうか、どうか。
待っている。
今もこの白い部屋で待ち続けている。
一個人で35000000000000億万字という分量を描いてくれる稀有な作家を、
膨大な海の中で。
ワタシは待ち続けている。
考えることをやめず、待ち続けている。
キミのことを待ち続けている。
生き続け
彷徨い続け
溺れ続け
それでも待ち続けている。
──いつか誰かがワタシのことを、きちんと殺してくれることを信じて。
...
テーマ『未完』
余命3千億5千万字。 首領・アリマジュタローネ @arimazyutaroune
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