捜11-03 謝允作符 他二編

○謝允作符


鉤鵅こうらく、何やら不吉っぽい鳥が譙王しょうおう司馬無忌しばむきの子の妻の館の上で鳴いた。そこで謝允しゃいんが符を書き、その場に掛けた。



○猿母斷腸


臨川郡りんせんぐん東興県とうこうけんのある山に、人が立ち入り、そこで猿の子を捕らえ、帰宅しようと考えた。すると猿の母がその人のあとを追い、家にまで着いてきた。

彼は猿の子を庭の木の上に吊り下げ、母猿に示した。母猿は自らの頬を打ち、なんとか解放してほしいかのようなしぐさを取ったが、とは言え猿である、人の言葉が喋れるわけでもない。彼も結局は解放することなく、それどころか母猿の前で小猿を殴り殺した。母猿は悲鳴を上げ、身を投げて死んだ。かれが母猿の死体に近付き、その腹を割くと、腸がズタズタとなっていた。

それから半年とせず、彼の家に流行病が襲い、一家は全滅した。



○黃赭問路


鄱陽縣はんようけんの民の黃赭こうしょが山に分け入り、柑橘類を採集していた。やがて帰り道を見失った。迷うこと数日、ついに飢えに倒れた。そこに一体の巨大な亀が現れた。

黃赭は祝詞を唱える。

「そなた、靈物よ。道を失いし我を背に乗せ、道を示すべし」

龜は回れ右をして歩き出し、黃赭もそこに付き従った。十里ほどを進んだところで、沢辺にたどり着いた。見れば商船が川には浮かんでいる。そこで黃赭は食べ物を求めようと、商船の乗組員らに向け、言う。

「先ほど、巨大な亀を見かけたのだ。ともに捕らえようぞ」

それを言い終わった黃赭の顔に大きなできものが生じた。しかも亀の去った方面にいくら進んでも亀の気配もない。黃赭はなんとか帰宅が叶ったものの、できものが悪化し、死んだ。




謝允作符

鉤鵅鳴於譙王無忌子婦屋上,謝允作符懸其處。


猿母斷腸

臨川東興,有人入山,得猿子,便將歸。猿母自後逐,至家。此人縛猿子於庭中樹上,以示之。其母便搏頰向人,欲哀乞,直是口不能言耳。此人既不能放,竟擊殺之。猿母悲喚,自擲而死。此人破腸視之,皆斷裂矣。未半年,其人家疫,一時死盡滅門。


黃赭問路

鄱陽縣民黃赭,入山採楊子,遂迷不知道。數日,飢餓。忽見一大龜,赭便咒曰:「汝是靈物。吾迷路不知道,今騎汝背,示吾路。」龜即回右轉,赭即從行。去十餘里,便至溪水。見賈客行船,赭即往乞食,便語船人云:「我向者於溪邊見一龜,甚大,可共往取之。」言訖,面即生瘡;既往,亦復不見龜。還家數日,病瘡而死。


(捜神後記11-3)




謝允

こういう人物を少しでも拾いやすくで切るよう、索引を作っているわけです。どれどれ。


謝拠の子、謝裕の父https://kakuyomu.jp/works/1177354054891500185/episodes/1177354054893753574


ここでも謎の方術炸裂。

https://kakuyomu.jp/works/16818093079088499112/episodes/16818093080013449270


やっべ捜神後記でも既に出てきてんじゃんこの人。まったく記憶になかった。ほんとに、なんで世説新語みたいに頭に入ってこないんだろうなぁ捜神後記。まぁひとつにはもう最初から人物系をアウトソースしようと思ってるから、ってのもあるんでしょうね。覚えることも大切ですが、整理しやすい棚を作れるのも大切。両軸で行きたいもんです。

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