捜11-02  謝奉說夢・宗淵放龜

○謝奉說夢


會稽かいけい謝奉しゃほうは、永嘉太守えいかたいしゅ郭伯猷かくはくゆうと仲が良かった。そんな謝奉が夢を見る。郭伯猷と誰かが浙江せっこうの上で賭博に明け暮れたところ水神の怒りを買い、川に落ちて死に、その葬儀を謝奉が運営する、というものであった。

謝奉は目覚めると郭伯猷のもとに赴き、囲碁に興じた。局面がしばし進んだところで、謝奉は「今日来た理由は、ほかでもないのだ」と、夢に見たところを語った。

郭伯猷はそれを聞くと、恨みがましく言う。

「確かにそなたの言うとおり、わしはひとと争った。どうしてそこまでわかってしまったのか」

間もなくし、郭伯猷はトイレに出ようとしたところで倒れ、意識を失った。謝奉は夢に見たことが実現したのだと悟り、郭伯猷の葬儀を執り行った。



○宗淵放龜


宗淵そうえん、字は叔林しゅくりん南陽なんようの人である。しん太元たいげん年間に尋陽太守じんようたいしゅとなった。

ある日、十頭の龜を得た。料理番に亀を回すと、宗淵は翌朝の食事として二頭でスープを作るよう命じ、ひとまずは亀たちを貯蔵してあった研ぎ汁の入れられていた瓶の中で飼わせた。するとその夜、夢に十人の丈夫が現れた。みな黒い上下を身にまとうも、後ろ手に紐で縛り付けられていた。彼らは悲しげな声で、宗淵に向かって叩頭し、慈悲を願い出てきた。

翌朝、食卓に二頭の亀が呈じられると、その晩の夢に出てきた丈夫も八人に減っていた。慈悲を願い出るところは昨晩と同じである。ようやく宗淵も悟り、亀を〆ないよう命じた。するとさらに次の夜、八人がまたも現れ、宗淵にひざまずき、感謝を述べた。

宗淵は驚いて飛び起きると、次の朝に自ら廬山にまで足を運び、亀たちを解放した。以後宗淵が亀を食べることはなくなった。




謝奉說夢

會稽謝奉,與永嘉太守郭伯猷善。謝忽夢郭與人於浙江上爭蒲錢,為水神所責,墮水死,己營理郭凶事。既覺,便往郭許共圍碁。良久,謝云:「卿知吾來意不?」因說所夢。郭聞之,悵然云:「信與人爭,如卿所夢。何期太的也?」須臾,如廁。便倒,氣絕。謝斷然理之,如所夢。


宗淵放龜

宗淵,字叔林,南陽人。晉太元中,為尋陽太守。有數十頭龜,付廚,敕旦且以二頭作臛。便著潘汁甕中養之。其暮,夢有十丈夫,並著烏布褲褶,自反縛,向宗淵叩頭苦求哀。明日,廚人宰二龜;其暮,復夢八人,求哀如初。宗淵方悟,令勿殺。明夜,還夢見昨八人來,跪謝恩,於是驚覺。明朝,自入廬山放之,遂不復食龜。


(捜神後記11-2)




引き続き水神神話に紙幅が取られるのは、やっぱり長江や浙江の恵みで成り立ってる地域なんだなって感じです。しかしこの、エピソードの方向性にまとまりがないのがいいですね。「創作ではなく、本当に収集しました」的な雰囲気を感じます。

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