何が見えても無視してください

おいでよ

何が見えても無視してください

0番で出席を取る空席の同級生とされているもの


宛先も差出人も分からない『見ている』とだけ書かれた手紙


窓際の席(飛び降りて死んだ子の泣き笑いのようなリフレイン)


天井の隅に張られた蜘蛛の巣は意中の人とおんなじ匂い


中庭の死体いつからそこにあり誰のものかも分からないまま


校庭を四角く囲うようにある祠の由来を誰も知らない


理科準備室の胎児のホルマリン ある女子生徒だけと目が合う


休むと赤い女が近づくから不登校児がいない学校


海の日はプールが黒く濁るから筋トレをする水泳部員


夏休み 当番制で何もない鳥小屋に生肉を捧げる


〔・水道の蛇口は一度礼をして使ってください。汚水が出ます〕


〔・各階の北端にある廊下では上履きを履いてはいけません〕


〔・図書室の利用は最低二人から〕 行方不明が絶えないらしい


〔・踊り場で立ち止まってはいけません。何が見えても無視してください〕


校則を守る僕らを唆す お札で顔が見えない女


水曜の五限は祈祷 校内で逆再生の歌が流れる


夕暮れの体育館のギャラリーの窓いっぱいに顔顔顔


放課後のネーブル色の教室で黙祷をする先生ひとり


屋上の出入り口には褐色の鳥居と黒い紙垂だったもの


学校で最も大きな桜には朽ちたロウプがいつまでもある

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何が見えても無視してください おいでよ @oideyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画