おわり
和希は本当に諦めの悪い奴で、オレ以上に頑固なのだということを、随分と思い知らされた。
折れたのは、自分だ。
土曜日のループは繰り返すほどに巻き込む範囲と規模を広げていき、起こる災害や犯罪も酷くなっていく上に、和希の死に様も見飽きていた。
いや、オレがもうこれ以上耐えられなかったのだ。和希が繰り返し死ぬことに。
オレがどれだけ見捨てるように頼んでも、和希は俺を生かそうとした。お互いに意地にもなっていた。だが和希はオレが思っていたよりもずっとエゴイストらしかった。
仕方ないので、生きてやることにした。
最後に話したのは、最初に飛び降りようとした雑居ビルだった。屋上ではなく、地上で。
どういう訳か和希は必ず居合わせる。これが運命と言うならクソ食らえだ。オレが諦めたことを伝えると、本当に嬉しそうに別れの言葉を言いやがった。それからあっさりと、落ちてきた鉄骨の下敷きになった。オレを庇って。
ループのキーワードの代わりに、俺は情けなく泣きじゃくりながら言う。
「やっぱり馬鹿だよ、お前は」
ロマンチスト・エゴイスト 灰崎千尋 @chat_gris
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