第21話 エピローグ

修徳高校の屋上で、先生や生徒から隠れるようにタバコを吸うアルキ。本来なら屋上に入ること自体出来ないが、今ではすっかりアルキの喫煙所になっている


「あっアルキ!またここでタバコ吸ってる」

「……おう、杏子あんず!お前の基地は、今では俺の居場所になったぞ!」

「うむ、入隊を許可します!」

「ふっ……隊員2号かな?」

「アルキは隊員5号!」

「――?うめひじりだからせめて4号にしてくれ」

「ターキーがいるでしょ?」

「アイツの次かよ!」


「カハハハ!少しは分かってるようだな!オンナ!」

「――!びっくりしたぁ……ターキーって学校でも出てくるの?」

「カハハハ!……隊員の前だけ、だけどな!」


「うっ!ターキーもカッコいい……」

 

「おい、勝手に出てくんな!」

「なんだと?アルキ!オレがいなきゃこのオンナに押し潰されるぞ!」

 

「ぐっ……たしかに……杏子!早く一華いちかの訓練を受けてくれ」

「えぇ?だって制御出来たら……アルキがいなくなっちゃいそうだから……」

 

「……」

 

「そのことだが、あとで「探求科」のみんなの前で、伝えなきゃいけないことがある」


「――え?何?……いやだよ……いなくなったらわたし暴走するよ……」

 杏子あんずは目に涙を浮かべて、すがるようにアルキの肩を揺らす

 

「ねぇ、忙しいのは分かるけど……行かないでよ……せっかく授業にも出れるのに……わたしもアルキの授業受けたいよぉ……」

 揺らされるアルキのタバコの灰が落ちるように、杏子の涙もポロポロと落ちていく


「杏子……教室で待ってろ!「探求科」副顧問七面歩ななおもてあるき、最後のホームルームだ!」


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 帰りのホームルーム、静まり返る教室は、初めてアルキが来た時の静けさとは違う

 杏子あんずが泣きながら教室に戻って来たので、心配した皆が理由を聞いたのだ


 探求科の生徒達にとってアルキは恩人だ。全員で「兎角隠し」を行っていたことを帳消しにし、加賀見亜里珠かがみありす田邑舞たむらまい相沢二斗あいざわにとも救われた。百地杏子ももちあんず伊倉梅いくらうめを教室へ戻してくれようともしてくれている

 

 その先生がいなくなる


ひじりがたまらず声を掛ける


「アルキ先生!僕達を置いて行くんですか?」

生徒達の中には、すでに泣いている者、行かないでと叫ぶ生徒もいる。杏子あんずは机にして子供のように泣いている

 

アルキは、ひじりの問いに笑顔で頷くと、皆の顔を一人ずつ見るように教室を眺める

「……お前たちは天才だ、将来を約束された勝ち組だ。と世間は思っているだろう……だが俺から見ればお前たちは、友人思いの優しい子供達だ……「国」の法律を破ってでも仲間を守るためにした行動は、世間で言うところのバカげた行動かもしれない。だがお前たちはまだ子供なんだ!子供なんだからバカげた行動して「はみ出して」もいいんだ!怒られたら謝ればいい……今のうちにどんどんバカをやれ!謝っても許されないことをした時に、俺たち「大人」がいる……「仲間」を助けたいと思い、私欲無く行動したお前たちを誇りに思うし、俺はカッコいいと思う……どうか、そのままのお前たちで大人になって欲しい……これが「探求科」副顧問七面歩ななおもてあるきの最後のホームルームとする!」


静まり返る教室内、アルキの言葉を聞き、すすり泣く生徒達、突っ伏していた杏子あんずも顔を上げて前を見る


「……では改めてまして明日から探求科「顧問」になります七面歩ななおもてあるきです!よろしく!」


「「「は?」」」


 生徒達の笑顔のブーイングが響き渡る


 ひじりは呆れて言葉を失う、安心してチカラが抜けたのか、皆がアルキの周りに集まるなか、その光景を眺めるだけだ


「ア〜ル〜キ〜!コラ〜!暴走するぞ〜!」

 言葉とは裏腹に笑顔の杏子あんずは、アルキの胸に飛び込んでいくのだった


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「聞いてようめ!アルキがさぁ……」

「ふふ、そうなんだ……」

「一華さんも聞いて下さいよぉ」

杏子あんずちゃん、アルキってそういう奴よ!平気で嘘つくし、美人な女性を見たらすぐに声を掛けるし」

「いや〜すまん!なんか青春ドラマみたいな雰囲気になってたから……つい」

「カハハハ!コイツは、ほとんど詐欺師みたいなもんだからな!」

「おい、俺が詐欺師ならターキーは悪漢だな!」

「なんだとアルキ!テメェはいつかオレが乗っ取る!」

「やれるもんならな!」

「ああ!?」

「なんだよ!」


 うめは「antenna アンテナ」でバイトをしている。始めは「兎角制御訓練」のため、一華いちかを訪ねていたが、いつのまにか期間限定で働いているのだ

 

 アルキは学校帰りに杏子あんずを連れて「antenna アンテナ」に寄り、梅と杏子が仲良く一緒に帰るという流れになっている


 アルキがおもむろにタバコを咥えると一華がそっと火を付ける……透き通った白い肌、揺れるボルドーの髪、吸い込まれそうな碧眼へきがんにゴクリと息を呑むアルキ……


 一華いちかがいつものように耳元で囁く


「次は……「バビロンの空中庭園」よ」


「は?」


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          END 

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オールドターキーと学校の七不思議 ろきそダあきね @rokisodaakine

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