第7話 復活、Luminis Rebellio!
「しかし……なんとなくやってしまったってなんなのよ」
桃音はため息をついて、二人のなぜ「Luminis Rebellio」を名乗ったかの理由に呆れかえりながら呟いた。
パフォーマンス後、二人は偽物のペアに公式に自分たちが「Luminis Rebellio」ではないことを表明させ、謝罪させた。
桃音はこれ以上彼女たちを罰しようとしなかった。
「嘘つきってみんなから見られる時点で、もう十分罰になるからね」
少女は肩をすくめて言った。
さて、群衆もパラパラと帰り始め、二人もそうしようとしたとき、背の高い男子が一人、桃音に近づいてきた。
「木内」
それは良助だった。桃音は彼の薄い笑みを見ると、怖くなってしまった。
彼はこのパフォーマンスを見ていたのか? 自分がハルモニアとわかってどう思ったのか? 幻滅されてしまっただろうか? やっぱり私は目立ってはいけないのだろうか?
「かっこよかったよ!」
だが、彼の言葉は桃音を称えるものであった。
「あんなに歌を歌えるなんてすごいよ! しかもあの曲自作? めっちゃいいじゃん! 俺のなんか全然だ」
桃音は顔を赤くさせ、小さく「ありがとう」と言った。
心配することはなかったのだ。彼はいつものように自分を肯定してくれた。
「さっきの誰?」
亜紗は良助が去ってから、彼女に尋ねる。
「うーん、好きな人……」
「は?! なんで教えてくれなかったの?!」
むっとしたのか、亜紗は桃音を軽くポカポカ叩いた。
「もー、ごめんって!」
桃音は困ったように笑う。全てが通常通りだ。
その晩、彼女は今まで働いていたスーパーを辞め、イタリア人の経営するイタリアレストランで働くことにした。人手不足に困っていたバイトたちは慌てたが、桃音は彼らを無視した。
「Luminis Rebellio」は復活し、二人は予定通り大学祭で公演することが決まった。
「まさか、桃音が俺と同じ、正体を隠す人だったなんてね」
良助は自分の下宿で一人呟いた。彼は洗面所で、自分の顔をじっと見つめた。普通の日本人の顔であった。
だが、彼が顔と頭に水をかけると、メイクが落ち、彼の本当の姿が現れた。
綺麗な二重、太いはっきりとした眉、癖のある髪の毛。明らかに純粋な日本人ではない顔の、普段の良助とはまったく違う人物がでてきた。
彼はしばし自分の顔を見つめていたが、やがてふんと鼻を鳴らして顔を雑に拭くと、荷物を持ってどこかへ出かけていった。
Hide in the Melody 西澤杏奈 @MR26
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