第6話 バトルの行方

「Outsider」

 亜紗と桃音が最初に作った曲。どちらの母国にもいまいち馴染めない彼女たちの苦悩を歌ったもので、刻むビートと力強い電子音が目立つEDM曲である。


 最初はメロディーの亜紗のパート。桃音は観衆から姿を消す。

 偽物たちもちゃんと曲が踊れるように今まで律儀に練習してきたのか、ちゃんと定位置に立った。


 "The mirror shows my eyes

 That doesn't belong to anyone"


 鏡は私の目を見せる

 どこの場所にも属せない目を


 亜紗は歌いながら、ゆっくりと歩いていく。そう、彼女たちはパフォーマンス中、いつも生で歌うことにしていた。偽物たちの片方もそうしたが、優雅さは本物に劣った。


 "Whereever I go

 There are no places

 Where I can be just a normal girl"


 どこへ行こうとも

 私の居場所はない

 普通の女の子にはなれないのさ


 亜紗がそこで踊り始めた。長い手を綺麗に使うその様子は、白鳥のようで美しい。

 すると突然、亜紗が分裂するかのように、彼女の後ろから桃音が飛び出してきた。


 "Haha what did you expect!

 That's just an illusion, we are forever outsiders"


 はっ!なにを期待していたの?

 それはただの幻想、私たちは永遠に「部外者」


 "I know, and I don't care what others think about me

 We're stars of this big stage

 Maybe I'm not the same as the others, but I'm not alone"


 知っているさ、だから誰が何を思おうと気にしないよ

 我々はこのステージのスター

 他の人とは違うけど、別に一人じゃない


 二人は全く同じ動きをする。亜紗のメロディーに、桃音のハモリが綺麗にかぶさる。ぴったり揃ったそれに、偽物たちが勝てるわけがない。


 "Take my hand, my friend

 Let's show ourselves

 We are different and no one can steal our uniqueness..."


 私の手を取って、友よ

 我々の真の姿を見せよう

 我々の「違い」だけは、誰にも盗まれることはない……


 二人はまた同化してくるくるとゆっくり回り始める。互いを姉妹のように思う二人だからこそ、できることであった。

 そしてジャンプ。二人は観衆の近くまで飛ぶ。


 "I'm an outsider!"


 私は「部外者」!


 強気の表情を二人は浮かべ、自分たちを指さす。


 "We're outsiders!"


 我々は「部外者」!


 そうして二人は手を繋いで、くるりと回る。


 "No one can beat! "


 でも誰にも倒されることはない!


 そこで二人は偽物のペアのほうを見た。その目線は、誰もが震えあがるくらい冷たかった。


 "We're winners, we're stars of this stage!"


 我々は勝者、そしてこのステージのスター!


 曲が終わった。

 勝者は明白だった。桃音たちが偽物と違ってごく軽い服装をしていたのにも関わらず、その歌声、パフォーマンスの圧倒的凄さで勝利した。

 偽物には最初からチャンスがなかった。試合は終了した。

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