第5話 復讐開始
テスト期間最後の日、大学の試験を終えた学生たちはどこかほっとしたように、ぞろぞろと建物から出てきていた。
七月下旬で太陽が照り、セミが鳴いているのにも関わらず、その人数の大半は大学の広場の真ん中へと向かう。
なぜなら、そこには「Luminis Rebellio」がいたからである。茶髪に染めていた彼女たちは綺麗に髪型をセットして、まわりと写真を撮っていた。桃音と亜紗の着ていた衣装と似たような服は、光に合わせて輝いた。
偽物の二人は満足していた。最初は、本当の「Luminis Rebellio」のグループがいつやってくるかわからずひやひやしていたが、動く気配がないことがわかると彼女たちは安心しきってしまっていた。
この大学内で匿名で活動するということに、何か理由があるのではないかと疑っていたが、ここではっきりした。やっぱりオリジナルの彼らは自分の正体を明かすことを怖がっていたのだ。
「ヒヒッ」
承認要求が満たされていた少女たちは思わず笑った。
彼女らの平穏は続くはずだった。とある二人の生徒が来るまでは。
「こんにちはー!」
異国の血が流れているとはっきりわかる少女たちが二人来た。片方はボブ、もう片方はポニーテイルの髪型をしていた。
同じく写真を撮りに来たのだろうと思った偽物の二人は、にこにこしながら彼女たちを迎える。
だが、歓迎された二人がしたことは、偽物のペアにとっては予想できないことであった。
亜紗はどこからかマイクを取り出し、歌い始めたのだ。
彼女はメロディー担当。声はとてもはっきりとしていて、美しい。あっという間に人々はその虜になり、静かになった。
ある程度人のざわめきが収まると、今度は桃音が話し始めた。
「こんにちは、皆さん! 私は国際学部に所属している者です! こちらは私の親友です! 本日、私はあることを伝えにここにやってきました!」
次は亜紗がマイク越しに話す。オーディオは以前に、人脈と、仲の良い教授を頼りに用意していた。
「それはこいつらがまったくもって『Luminis Rebellio』ではないことです!」
「はぁ?!」
後ろにいた偽物たちは素っ頓狂な声を上げた。
「あんたたちはなぜかこいつらの嘘っぱちを信じてしまっているようだが、ここにて言おう! この二人はただのパクリ野郎! 本物の『Luminis Rebellio』はこっちだ!」
亜紗と桃音はそこでびしっと自分たちを指した。
周りの生徒たちの騒ぎ声が大きくなった。
「どういうことだ?」
「どっちが本物なの?」
「ただの後出しだろ!」
「いや、確かにずっと変だと思っていたんだ」
さまざまな憶測が飛び交う。後ろにいた偽「Luminis Rebellio」は、荒い声を上げた。
「な、なにを言っているの?! うちらが本物の『Luminis Rebellio』に決まっているでしょ?! あんたたちはあの偽物のアカウントを作った奴に違いないわ! 証拠はどこなの?!」
「ほっほーう、そうかそうか。認めようとはしないんだな」
亜紗は二人をぎろりと睨んだ。彼女の鋭い眼光に、思わずたじろいでしまう。
「ならば勝負をしようじゃないか」
さらさらな髪をなびかせて、彼女は言った。
「生徒たちの前で、バトルをするのだよ。歌選手権のようなものだ。同時に曲にあわせてパフォーマンスをしよう。どっちが『Luminis Rebellio』なのか、観客に決めてもらうんだ。あんたらが本当に本物であれば、断る理由なんてないだろ?」
偽物たちは黙ってしまった。目には不安の色が映っている。
観衆はバトルをすると聞き、盛り上がって声を上げた。今度は桃音が説明を続ける。
「曲名は『Outsider』。私たちの定番の歌ね。さあ、曲をかけるよ!」
スピーカーから桃音の作った音楽が流れ始めた。そこで三つ編みで髪を結んだ彼女の顔が、にぃっと歪んだ。
歌うときには性格が豹変する。それが木内桃音カロリーナであった。
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