第4話 真ん前
最近の話。友達と二人でお祭りに繰り出した。ふと友達が食べたいと言った屋台に並んだのだが、その列の前に私の好きな人とその恋人のカップルが並んでいるのが見えた。前に見た時よりも見た目は明らかに変わっていたのだがすぐにわかってしまう。
朗らかに身を寄せて笑い合う二人。私の記憶よりもずっとずっと晴れやかに笑うその娘の顔を見るとなんだかいたたまれなくなって、体を横に向ける。友達と喋ってる時も意識はそちらに引っ張られているのが嫌だったので、その娘に背を向けるようにして友達の前に立つ。
昔の過ちをいくつか数えると心の中で落胆する。土俵にすら上がってないのだが勝手に負けた気にもなる。Ifを考えてしまう。
ああ嫌だな。と心でぽつりと溢す。
列が自分たちの番になって目的の物を買い終わるとその娘はもう視界から遠ざかっていた。
過ぎるとそんな気持ちは無かったような気がして、そのことが几帳面にすぐ蓋をする性格のせいかは分からない。
気持ち悪くて仕方ないなと思う。
せっかく蓋をしてても布団に潜ると漏れ出てしまうのは、きっと心が弱いせいだろう。
なにものでもない 露草 @kanikaniku
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