素数ゼミって知っていますか?

武藤勇城

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素数ゼミって知っていますか?

 セミの一生は短い。そんな言葉を聞いた事はありませんか? セミが成虫になってから、外の世界を自由に飛び回り、子供を作って死ぬまで、およそ一週間から一ヶ月しかありません。だからセミの一生は短い、なんて言われます。本当でしょうか?


 セミの鳴き声は、夏の風物詩です。「ミーン、ミンミン、ミィ~……」と鳴くミンミンゼミ。「ツクツクボウシ、ツクツクピィヨー……」と鳴くツクツクボウシ。「ジィ、ジィ、ジリジリジリ……」と鳴くアブラゼミ。「カナカナカナ……」と鳴くヒグラシ。「シャーシャー……」と鳴くクマゼミなどなど。日本で見られるセミは、二十五種類ほどいるそうです。

 結論を言えば、セミは長命な昆虫です。日本にいるセミで最長七年。海外にいるセミだと、十七年生きるセミもいるんです。カブトムシやクワガタが、ほとんど一年、長くても数年しか生きないのに比べると、何倍もの寿命があります。場合によっては犬や猫よりも長生きします。それだけでも驚天動地、青天の霹靂、目から鱗、なんて思うかも知れません。でも、もっと不思議な話もあります。


 素数というのは分かりますよね。『1』を省き、その数以外では割り切れない数字です。例えば『2』は2以外では割り切れません。だから素数です。『3』も同じです。『4』は2でも割り切れますので、素数ではありません。『5』は素数で、『6』は2と3でも割り切れるので違います。小さい方から並べていくと、2、3、5、7、11、13、17……これらが素数です。そして、ここで挙げた最後の二つ、十三と十七という素数に関連する『素数ゼミ』と呼ばれる昆虫がいます。十三年間土の中で生きて、十三年目に一斉に羽化するセミを『十三年ゼミ』と呼びます。この十三年ゼミは四種類いるのに、十四年の周期で生まれるセミはいません。十五年のセミも、十六年のセミもいません。それなのに、十七年ゼミというのがまた三種類いるんです。この十三年ゼミ、十七年ゼミを『周期ゼミ』と呼ぶそうです。

 周期ゼミは、全て同じタイミングで羽化します。十年目や十一年目に土から出て羽化する個体はいません。十二年間、一匹も出現せず、十三年目に一斉に羽化するんです。不思議ですね。うっかり一年早く出て来てしまうと、周囲に仲間が誰もいないので子孫を残せません。だから正確に十三年目に羽化します。

 今年、二〇二四年は、二百二十一年に一度の珍事が起きるそうです。『221』という数字が何を示すか、ここまでの話でピンと来る方が多いでしょう。そうです。『13×17』これが『221』です。十三年ゼミと十七年ゼミ、二種類の周期ゼミが同時に発生する奇跡の年なんだそうです。(以下参照)



「素数ゼミ」2024年アメリカで1兆匹の大量発生へ 221年に一度の数学と自然の神秘

globe.asahi.com/article/15163443

(一部引用 周期ゼミの画像あり)

>あのセミたちが、やってくる。米国の中西部や南東部では、かつてないほどの多さになるだろう。(中略)

>2024年は、それから初めて北米固有の「素数ゼミ」(訳注=13年ごとに大量発生する「13年ゼミ」と17年ごとの「17年ゼミ」がある。13も17も素数であることからこの呼び名があり、「周期ゼミ」とも呼ばれる)の二種がともに羽化する年となる。(中略)

>「現代人は、だれ一人として次のダブル羽化を体験することはできない」とフロイド・W・ショックレーは、いかに貴重な機会であるかをまず強調する。(中略)

>ダブル羽化で最も注目される点の一つには、この両種の交配が生じるのか否かということがある。というのも、イリノイ州北部のごく細長い地域だけは、両種の生息域が重なっているからだ。

>「適切な環境と最低限必要な数の交配があれば、新たな年次集団が形成され、新たな周期で出現するようになるかもしれない。そんな機会が訪れることは、めったにない」とショックレーは興奮気味に語る。(以下略)



 一応補足しておきますと、同じ十三年ゼミでも、出現するエリアと年が違うものがいます。今回の同時出現は、アメリカ中央、南北の広いエリアで観測できるようです。この地域では二百二十一年に一度ですが、他の場所ではまた別のタイミングで同時羽化します。

 なぜ十三年または十七年に一度しか羽化しないのか。謎に包まれています。正確な事は分かっていません。セミが羽化するのは子孫を残すためですので、普通に考えるならば、これは種族繁栄のための知恵でしょう。それ以外の年数のセミは、長い歴史の中で自然淘汰されたという事になります。

 という訳で、今年二〇二四年、もしアメリカへ行く予定があれば、この機会に是非、素数ゼミのダブル羽化を楽しんで来て下さい。素数ゼミがどれだけ大量にいるのか、どれほどの騒音になるのか。動画などに収めれば、貴重な記録映像になるかも知れませんね。今回は以上です。

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