フィロ編:実験
痛い。痛い。痛い。でも耐えなければ。泣き言を言うのは許されない。
ここはフォーゲル。ここではこれが日常。優秀な実験体であるフィロは毎日のように過酷な実験を受けさせられていた。フィロは優しく、聡明な子供だった。それ故辛い実験もみんなのためだと耐えられた。だがそれも限界だ。
フィロは気が狂いそうになっていた。必死に正気を保とうと実験に無理矢理興味関心を持つようになった。辛いことでも無理やり好きになれば耐えられると思ったからだ。
「フィロ、これからあなたの体を作り変える実験をするわ。成功すれば不死身の兵士になれるの。なんて偉大な研究なのでしょう。良かったわね!」
自分を拾ってくれた研究員が嬉しそうに語る。親のような存在だ。
「ははっ、これが俺の臓物か...美しいな...」
フィロは完全に壊れていた。実験の虜になり独断で自分の体をいじくり回すようになった。フィロの天才的な頭脳と実験により生み出された不死に限りなく近い体。そんな彼を周囲はこう呼んだ。
「ば、化け物...!!」
「化け物?俺をこんな体にしたのはお前達だろう」
「どうして実験は成功したのに私達を襲うの!?私達がどれだけあなたに心血を注いだのか分かっているの!?」
「ああ、よく分かっているさ。だからこうして実験の成果を見せようとお前達で試しているんじゃないか」
「ふざけないで!!モルモットなら他にもいるでしょう!!私達の崇高な目的はこんなところで――――」
「もういい。うるさい」
研究員が赤く染まる。
「こっちの方が素敵だよ。母さん?」
フィロはフォーゲルの研究員を虐殺して回った。それは自分を痛めつけた者全員だった。それから彼は姿を消した。
この一件によりフォーゲルはフィロに行っていた実験を凍結。万が一再開するようなことがあれば逆らわないように必要以上に痛めつけるよう言い渡された。
氷の記憶と不滅の者 たなみた @tanamita0213
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