第10話 流出してしまった僕のビデオ

流出してしまった僕のビデオ


海外から送信されるビデオはその国の倫理規定がないため、モザイクなしの無修正のもの多く検閲の網を潜り抜けて市場に出回ってしまう。どのような理由で流出してしまったのかはわからないが、モザイクのない僕の全裸姿が多くの人に見られてしまうという現実だけが僕の身に降りかかってきた。幾ら国内で猥褻物に対する規制を設けても、そのような法律のない国では無修正作品の販売は可能で、それがネットを通じて海外に配信されてしまえば、幾らでも国内で見ることが出来る。


僕は性行為に対する撮影はNGにしたけれど、口を使ったオーラルプレイや全裸のシーンはOKにした。勿論、作品になる際にはモザイクを掛けることが前提になるが、市場にはモザイクのない無修正作品がたくさん出回っていることは承知していた。でも、まさか、自分の作品がそのような対象になるとは思っていなかったので、困惑した。でも、僕の知名度がそのような行為になったのだから仕方ないが、家族にそれを知られたくなかった。


僕は直ぐにビデオ会社に電話を入れてその真偽について問いただした。会社の人間も流出した事実は知っていたが、どうしてそれが流れてしまったかは、わからないという。今の時代は幾らセキュリティをしっかりしても網をかいくぐる技術が出回っているし、モザイクを外してしまう技術もあるという。そして、一度流れてしまった映像は消すことが出来ないので、購入した人がネットの上げてしまえばどんどん世の中に広がってしまうのだ。


世の中に出回ってしまい、拡散されてしまったものはもう消すことが出来ないのを僕もしっている。だけど、それを恐れていては仕事は出来ない。僕はもう若くないので男のアイドルのようなポートレートだけでは人が見てくれないことを知っている。そこで、僕は緊縛師の師匠に相談することにした。師匠もその噂は既に知っていて僕にある助言をしてくれた。


師匠の助言で僕の生き方が変わる


「アユミは男の娘のアイドルなんだから全く気にすることなんかないさ。ファンはみんな男だということは分かっていて応援してくれているんだ。無理に男だということを隠す必要もないし、アユミの全てを見せればいい。私はまたアユミの緊縛画像を撮って欲しいと思っているし、無理に君の性器を隠したいとも思っていない。女の子の様に可愛い君の身体に男の印がついているだけなんだから、アユミの全てを見せればいいんだ」と話してくれた。


それで僕は少し気持ちが楽になって、今までの経緯を包み隠さず妻のアヤ様に話す決心がついた。最初は怒った顔をしていた彼女も師匠からの言葉を伝えると納得してくれた。そして、「貴方がまた男の娘アイドルや緊縛モデルの仕事を続けたいのなら私は構わないわ。だって、アナタを初めて女装させたのは私だし、マゾの性癖を見つけて奴隷にしたのも私よ。アナタの全てを知って私のモノにしたの。それは夫婦になっても子供に親になっても同じよ。だから、アナタがしたい仕事をすればいいし、私もアナタの力になればどんなことでもするつもりよ」と言ってくれた。


それで、吹っ切れた僕は、また師匠にお願いして緊縛の仕事を始めることにした。勿論、ブックデザインは僕が全て請負い、師匠の仕事を全面的にバックアップすることにし、撮影は始まった。既に僕の身体は女性化していて裸にならなければ決して男性だということは分からない。だからと言ってもうAVビデオの仕事をするつもりはない。縛られた女性の美しさを表現する緊縛プレイのモデルとしてそのすべてを師匠に任せることにした。女性ホルモンの影響で男性の機能が失われていく僕には今後、子供を設けることは出来ないかもしれないが、一人の新しい命が誕生したことで僕は満足していた。


次第に女性に変わっていく僕の姿を見ながら、子供は「どうして私の家にはママが二人いるの?」と言うかもしれない。でも、それは僕とアヤ様が選んだ道で、それは二人にとってふさわしい生き方だと思ってきた。子供が大きくなればまた、アヤ様は新しい仕事を見つけ、自分を生き方を歩んでいくだろうし、僕も今の仕事が出来なくなれば、新たな仕事を見つけ生きていくだろう。


姿は互いに変わっても僕たちに関係は変わらないと思うし、アヤ様は妻であっても永遠に僕の女王様であることに変わりはない。例えプレイはしなくなってもその思いはいつまでも変わることはないのだ。そして、僕の新しい写真集「男の娘アユミの緊縛の世界」が出版され、それが大評判になり、僕は再びスターになった。でもその後、僕は表舞台から姿を消し、裏方になる決心をし、子育てとデザイナーの仕事に専念することにした。そして、アヤ様はまた営業の仕事に復帰し、バリバリ働くようになった。


僕は再び主夫の生活に戻り、以前の様に家事をこなす生活をしている。アヤ様も以前の様に私のことをアユミと呼ぶようになり僕は再び奴隷になった。そんな私たちの生活を子供は不思議そうに見ている。でも、いずれ僕とアヤ様の関係が分かる日が来るだろうと思って生活しているのだ。

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僕の素敵な結婚生活 @toshiko1955

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