2.「自由」なのに「理不尽」の矛盾
以上を踏まえた上で――
サガシリーズ、そして直近の最新作サガエメに話を戻すと。
正直に申し上げますと、
「フリーシナリオのはずなのに、ひどい不自由を感じる」
という印象が強いです。
というのも――
サガシリーズはサガエメの前作、「サガ スカーレットグレイス」ことサガスカ(2016年発売)にて、良くも悪くも大きく変貌を遂げました。
街やダンジョンの探索要素が大幅に削除され、フィールドが一枚絵のような書き割りとなりその上に祠や街、洞窟や塔などのアイコンがぽつぽつと点在している。その間を主人公が移動していく……という形式。
3Dの街やダンジョン探索が最早当たり前となってしまった今の時代、このサガの変貌は賛否両論でした。というか多分否の方が多い。
この形式はサガエメでもほぼ同じです。
このシステムに関しては自分も、受け入れるまでかなり時間がかかりました。
というのは、ただ街やダンジョンが簡略化されたというだけではすまなかったからです。
主人公が街のアイコンに触れて街へ入る
↓
街へ入ったらいきなり誰かに一方的に話しかけられる
↓
よく分からないまま強制的にバトル突入!
↓
バトルが終わると、何故かその街(もしくは周囲の建物)が崩壊する可能性が高い
(炎を上げたり崩れたり)
そこに何の因果関係があるのかよく分からないこともある
↓
その街に入れなくなったり特定のイベントが消えたりする
……とまぁ、こんな流れになることがあまりにも多すぎた。
街などのアイコンに触れるたびに当たり前に強制バトルが発生し、バトル終了と同時に周囲のアイコンに変化が発生し、何らかの行動が出来なくなる。
いや、確かにロマサガでも街に入ったらいきなり敵に襲われることはあったけども、こんなに頻繁にではなかったでしょうに……と言いたくなりました。
そしてこれで意外ときついのは、「選ばなかったルートが潰される」のが視覚的に分かりやすくなってしまっている点です。
そして、「どうしてそっちのルートが潰れるのか」の理由がよく分からない、理解できないパターンも多数。
例えばロマサガ1(ミンサガ)のアイスソードイベントであれば、
1・相手と交渉してアイスソードを譲り受ける
2・相手を殺してアイスソードを奪う
の二択があります(正確には「今はあきらめる」の選択肢もあるが実質この二択)
どちらも決して両立はしない、確実に二者択一の選択肢であることはサルでも分かる。
選んだらその後どういうルートになるのか、何となく分かりそうな選択肢でもあります。
ですがサガスカの場合、選択肢の意味もよく分からなければ、どちらを選択したらどうなるのかも予測しづらいケースが多い。
(一見良さそうな選択肢に見えても実はかなり悪い結果を招く、というパターンも結構あったのがタチ悪い。ドラクエ6の某イベントみたいなものが多数)
ふらりと街に寄ったらいきなり爆弾のコードを突きつけられて、「赤か青どちらかを切れ」と言われているも同然!というイベントがやたら多かった印象です。さらに言えばその爆弾でどこがどう爆発するのかも分からない。
わけの分からないうちに「赤か青かを切れ!」と言われ
わけの分からないうちに次々に切っていったら
わけの分からないうちにどこかで地雷が爆発していた。
サガスカのイベントは全体的に、そんな理不尽なイメージが非常に強かったです。
(ついでに言うと、コードを切ろうとするたびに超高難易度のバトルが発生するイメージも)
「フリー……って、何だっけ?」と考え込んでしまった次第。
そしてこういった形式は、最新作のサガエメでもそこまで変わっていませんでした。
さらに言えば、サガエメでは主人公の選択する道が光の筋となり、行先も光るアイコンとなって分かりやすくなっているのですが……
何らかの選択をしたりバトルしたりした後、その光の筋やアイコンのいくつかが強制的に消えることが非常に多い。新しく光の筋が生まれることもあるのですがそれ以上に消える光が多い。
つまり、ルートが消えるのがサガスカ以上に分かりやすくなってしまっててキツイ。
な、何でそっちのルート消えた!? バトル終わったらそっち行こうと思ってたのに!!
となるケースがどれほどあったやらです。
「フリー……って、何だっけ?」と(ry
要するにサガスカもサガエメも、体裁的にはフリーシナリオをうたっていても理不尽にルートを封じられるケースがあまりにも多く、逆に酷い不自由を感じることが多い。
それまでのサガシリーズでも理不尽な選択を迫られたり、ルートが封鎖されることも少なくはなかったですが、サガスカやサガエメの場合やたら多すぎる感じはします。
何かアクションをするたびに、「何かが出来るようになる」というより「何かが出来なくなる」印象が強く。
「今度はどこへ行けるんだろう」のワクワクより「今度はどこに行けなくなるんだろう」のビクビクが勝る。
思い通りのルートになんぞ絶対行かせないぜ!という執念すら感じるレベルです。
「フリー……って、何だt(ry
また、どうしてそれが両立不可の二者択一になるの?と疑問に思うケースもよくある。
Aというキャラに何らかの関係がある地方にきて、出てきた選択肢が
・Aの過去を探る
・観光をする
で、観光コースを選んだらどうしてAの過去が探れなくなるのかと。
両方やれや! というか普通、Aの過去探ってその後に観光楽しもう!ってなるだろ!
(Aの過去コースを選んだら観光コースで出会うキャラが仲間にならない……というケースも)
そして、つい数日前に思わずムキャー!!!(# ゚Д゚)となったケースがこちら。↓
とある厄災に襲われている世界で、厄災を止めて回ると同時にBさんというキャラのお悩み相談的なことをやっていたんですが、ある時ルートが二つ出現し
・その辺の街が厄災に襲われてるので戦って被害を防ぐか
・Bさんのイベントを続けるか
となりました。
で、どっちを先にやるか?となってとりあえず厄災を防ぐルートを選びました。
手近な危機を解消した後にゆっくりBさんのイベントやろうと思っての行動です。
そしたら
あれよあれよの間に勝手にイベントが大幅に進み
そのままその世界がクリア扱いとなって
「もうここには来られないよ」的なことを言われ
その世界から強制的に追い出された。
え、えっと、Bさんのイベントは……?となったのは言うまでもありません( ノД`)
(ついでに言うと、こっちのイベントやるとメインイベント進むよ♪的な表示は特になかったように記憶している)
分かりやすくティアキンに例えると、
チューリや子供たちのお願い事イベントを聞いている最中に
うっかりテバのところに顔出したら
何故かメインイベントが進んでテバに強制的にリトの村から追い出され
しかもリト村が永久に出入り禁止になった!!みたいなものです。
そんなテバ嫌いだぁ! テバはそんなことしないもん!!( ノД`)
直前セーブからやり直せ?
はい、勿論やり直そうとしたんですが……
間違ってロードでなく再セーブするというウッカリをかましてしまい( ノД`)
二度とBさんのところへは戻れなくなってしまいました( ノД`)( ノД`)
ロマサガ3で大事なセーブデータを何度も上書きしてしまい結局トム君1周しかクリア出来なかった経歴はダテじゃねぇ!
っていうかサガエメ、セーブ&ロードのUIも地味に使いづらい(´;ω;`)
ここまでくると二者択一の選択肢なんかやめて、いっそティアキンみたいにどのイベントからやってもいいし何をやってもどのルートもイベントも消えない!という形式にしてしまえとさえ思ってしまう。
いやまぁ、確かに今までのサガでもありましたよ?
ニンフ像の事件解決したらあれよあれよの間にカーチャンが海に飛び込んだりとか
人魚に恋したら皇帝が強制的に退位したとか
レア装備つけたキャラがイベントで勝手に魔物化して大量のレア装備ごと消えたとか。
しかしそういう事態が、イベントごとに当然のように起こってしまうと……
勿論、こういった形式のゲームを好むかたも多くいらっしゃると思います。
ノベルゲームなどでも、プレイヤーの思ったように主人公が動いてくれず、主人公の行動に対して「どうしてそっちのルート行くの!?」「どうしてそんな行動するの!?」となるケースも結構あるようなイメージ。
そういった理不尽も逆に楽しい!というかたであれば、結構面白い作品なのではないかと>サガスカ&サガエメ
ただ個人的には、「フリーシナリオ」をうたっているシリーズの作品で、「フリー」より「理不尽」を感じすぎる事態はどうなのかと思ってしまった次第。
サガスカではそういう形式があまりハマれず、また、頻繁に発生するバトルが『超』がつくレベルの高難易度だったこともあり、6周ぐらいでやめてしまいました。一応主人公は全員クリアしたんですが、シナリオもエンディングも半分も見られていないと思います……
ただでさえバトルが理不尽なのにシナリオ分岐まで理不尽ときたら、そりゃ賛否両論になっても仕方ない。
(ちなみにサガエメのバトルも高難易度ですが、『超』がつくレベルではないです。敵の火力がだいぶ良心的になった気がw)
サガエメも現在6周目ですが、サガスカ以上に分岐が複雑怪奇です。
しかしサガスカと違う点といえば……
以前の周回と同じ主人公で同じルートをたどろうとしても、どこかで大きく展開が違ってくるという点でしょうか。
特定の主人公でストーリーを追うと、それまで周回した結果を元に話が変化する?なんて噂もあります。
つまり前述のノベルゲータイプの(エンディングを見るたびに次の周回の展開が変化するタイプの)展開が一部に存在するとか……
未だそこまでプレイ出来ていないので詳細が分からないのですが。
サガエメに関しては色々レビューも見ていますが、印象的だったのが
「これは正解を探すゲームではない」という言葉でした。
つまり、「17ある世界全部回って仲間も最強武器も全部集めて、その果てにいる真のボスを倒して完璧なEDを目指す!」ということはできないし。
また、「今回はこのルートを行こう! 仲間はここであいつとあの娘を連れてきてこのEDを目指そう!!」と色々予定たててプレイすると高確率でバカを見ますw
自分がサガスカを投げてしまった一番の理由が、「よく噂にきくウルピナ結婚ルートED見たい!」と思って攻略サイトどおりに全部のフラグを立てたはずなのに、何故か既に何回か見たEDになってしまったからなのですが、まさしく「そういうプレイスタイルには向かないゲーム」ということなのでしょう。
さらに言えばサガエメ、「何十周してもいいから全ての要素をコンプしたい!」というコンプ欲さえ萎えさせる要素があるらしい。
何周かした時点でもう見られなくなってしまうEDさえ存在するらしいです。つまり特定の周回で分岐をしくじると、その後どんなに周回を重ねても二度と見られないEDがあるらしい。しくじったけどどうしても見たい!という場合はアカウント複数作るとかして一番最初からやるしかないのか。
コンプ欲旺盛なプレイヤーには地獄のようなゲーム!! せめて引き継ぎ時にストーリーリセットONOFF機能を(ry
そしてサガエメにしばらく触れていて思ったのは、
「何でもできる、何でもやれる」という「自由さ」よりも
「何が起こるか分からない」「誰に出会えるか、何と戦えるか分からない」、全く違う意味での「自由」を重視したつくりのゲームなのかなということでした。
何が起こるか分からないけど、とにかく気の向くままに、進めるだけ進んでみよう!というゲーム。
制作者的には、何十周プレイしても「何をやれば終わるかすら分からない、何かが起こるかも知れないし何も起こらないかも知れない、あてのない旅」が楽しめる、というゲームを目指している感じもします。
攻略本も買ったのですが、チラ見しただけであまりの詰め込みぶりに眩暈がしました(;´Д`) どんだけルートあるんだコレぇ!!?
こうして見ていくと、サガエメはあらゆる要素がティアキンとは対極に位置するゲームだなと思います。
むしろ、ティアキンみたいに何もかも自由なゲームには絶対しないぜ!してたまるか!!というものすごい執念すら感じる。何かやるごとに丁寧に理不尽に消されていくルートを見るたびそう思う。
ミンサガで「デスティニィストーンを全部コンプ可能にするのは反対だった」という河津さんの精神が、嫌というほど感じられます! もう嫌というほど!!
強敵も全部倒してパラセールも図鑑もカバンダも井戸もマヨイもコログ1000匹も、頑張ってコンプするぜー!という人には間違いなく向いてない!
「あらゆる要素のコンプ」というのはほぼ「ゲームの終わり」を意味するから、そういう点を河津さんは嫌ったのかな……と邪推したりもします。
どうやったら終わりになるのか、6周目突入した現時点でも全く見えないですし。
ティアキンのコログ1000匹も終わりが見えず未だ達成できていませんが、それとは違う意味での「終わりの見えなさ」。
サガエメタイプとティアキンタイプ、どちらが良い悪いではなく、どちらもそれぞれ良さがあり欠点がある。
恐らく多くの人が支持するのはティアキンのような「自由」だし売上もそれを証明しているけど、サガエメのような「ある意味自由」なゲームがあってもいい。最初は面食らいましたが、やっていくうちにそう思えてくる不思議。
これだけ複雑に構成された分岐を見ると、サガエメがティアキンと同価格帯というのも何となくうなずける気がしてくるのも不思議だったり。
マイクラやビルダーズが地形をランダム生成してしまえるように、いずれはシナリオがランダム生成されるゲームが出てくるんだろうか……と、サガエメをやってて思った次第です。
ただサガエメは、あのUIだけは何とかしてほしい!!
あれだけは擁護のしようがないです! せめてキャラの装備欄から直接装備強化が出来るようにアプデしてくれぇええぇ!!!
「フリーシナリオ」って、何だ?~「サガエメ」から色々考えた~ kayako @kayako001
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