「フリーシナリオ」って、何だ?~「サガエメ」から色々考えた~

kayako

1.「フリーシナリオ」を巡る時代の変化



 またしてもゲームの話になり申し訳ありませんが。

 最近、サガエメこと「サガ エメラルドビヨンド」(Switch版)を購入、楽しみながらプレイ中です。

 しかしこの作品をプレイしているうちに、ゲームシナリオ、特にルート分岐の構成について何となく考えてしまうことが多くなり、少しだけ書いてみようと思い筆をとりました。



 サガエメは「サガシリーズ」と呼ばれるRPGシリーズのひとつで、2024年5月現在、シリーズの最新作です。


 日本のRPGといえばドラクエにファイナルファンタジー(FF)シリーズが非常に有名ですが、その2シリーズは特徴が「ルートが常に一本道、結末も1パターンのみ」という点でも有名です。

 時々イベントの入れ替えが可能になることもあったり、イベントを飛ばしてもゲームクリアは可能だったり、サブイベントの結果によって微妙に結末の一部が変化したりなどはあるものの、基本的には一本道になるよう構成されています。エンディングも同じ。

 最近のFFは未プレイなので詳細は分かりませんが、ドラクエは最新作の11でもなおこの形式を貫いています。


 これに対してサガシリーズは1992年発売のロマサガ1こと「ロマンシング サ・ガ」以降、「フリーシナリオ」と呼ばれる形式をとっています。

 ドラクエやFFなど、通常のRPGではプレイヤー側が特定の条件を揃えない限りイベントが進まないですが、サガシリーズでは(特にロマサガ1~3では)時間軸の概念を取り入れることで、主人公の行動にほぼ無関係にイベントが勝手に進む形式となっています。

 戦闘をこなすごとに時間が進むという形をとるものも多く、戦ってばかりいるといつの間にか大量のイベントが終わっていた!などという事態も起こりえます。

 さらに主人公は1人ではなく複数名存在することも多く、特定の主人公でしか体験できないイベントも多い。


 そしてフリーシナリオの最大の特徴は何といっても……

 選択肢が非常に多く、選択の結果によってはルートが大きく変化することも多い点でしょう。最初からどこへ行ってもいいし、何をしてもいい。道は主人公が作る! それがフリーシナリオ!

 周回(=一度クリアしてもう一度最初からやり直し)しなければ取り返しがつかなくなるイベントも非常に多いため、シリーズの多くの作品は周回を前提に設計されています。


 一本道タイプのRPGと違い、どのようなルートをとるかはプレイヤーの手に委ねられている。それが、サガシリーズが「フリーシナリオRPG」と呼ばれるゆえんです。

 ロマサガ1~3が世に出た当時は、この形式のRPGは非常に珍しかった。

 途中のルート選択を自分で決定できたり、時にはろくでもない選択肢(例えば殺人を犯して武器を奪ったり、多くの住民を犠牲に禁術を入手したり)を選ぶこともできて、しかもそれを実行出来てしまうという点が非常に話題になり、人気のシリーズとなりました。

「どこへでも行ける」というフリーシナリオの特性から、特定の地域に行くと敵が突然強くなるということはあまりなく、こちらの強さに合わせて敵も強くなるというのも特徴のひとつ(但しこのシステムのせいで、最初から最後まで苦戦を強いられることも多い)


 また、その特性上どうしても非常に膨大なテキスト量となる為、キャラクターの深掘りや心理描写、イベントストーリーの詳細や背景がこと細かに描かれることは殆どないと言ってよく、最低限の描写しかなされず(時には最低限さえなされず)イベントが終わるケースが多数をしめる。だからストーリーやキャラ解釈が、プレイヤーの想像に委ねられることも多いです。


 しかし時代が進むにつれ、サガシリーズ内でもフリーシナリオの形は少しずつ変遷していきました。


 ロマサガ1(後のリメイク作品であるミンサガ含む)の場合は主人公が複数から選択形式で主人公ごとにエンディングも違いましたが、終盤はどの主人公も同じ流れになりラスボスは全て共通。ロマサガ3もこれとだいたい同じ。

 ロマサガ2も途中のルートが非常に自由でしたが初期イベント、及び終盤の流れやエンディングは共通。

 主人公は複数から選べて途中のルートもかなり自由ですが、終盤ではどれも似たような流れになり倒すラスボスも共通……というのが、ロマサガ1~3の特徴のように感じます。

 サガシリーズといえばロマサガ!というファンも多く、今もなおロマサガ4を望む声もよく聞かれます。


 ですが、1997年発売の「サガフロンティア」ことサガフロでは、複数主人公でなおかつ、ラスボスも主人公ごとに違うという変化が起きました。

 それだけではなく、主人公によってはエンディングも複数発生するというケースも生まれました。

 バトルを重ねるごとに勝手に時間が進んでイベントが消失する、ということもあまりなかった。フリーシナリオ形式という点でも画期的な試みが行われたサガフロですが……

 その一方、主人公によっては「フリー……とは?」と思ってしまうほど行動が制限されていたような感覚もありました。

 ロマサガ1や3でも感じたことですが、シナリオが濃い主人公ほど自由に動ける範囲が狭くなっていたような気もします。

 どの主人公を選んでも序盤と終盤でルートがほぼ固定され、中盤で自由行動が可能にはなるものの、自由行動時にやれることといえばルーンとカード集めぐらいしかなく結局同じようなルートになる……というのが、サガフロで「フリー」をあまり感じられなかった原因かも知れません。



 その後の「サガフロンティア2」(1999年)ではシナリオ形式自体が大きく変わり、最早「フリー」とは言えないレベルの一本道シナリオに。

 さらにその後のアンサガこと「アンリミテッド:サガ」(2002年)は、ゲームシステム自体が大きく賛否両論を生むほどの問題作となりました(複数主人公方式で、主人公ごとに特定のボスが存在するなどの点はサガフロ1と似ていますが)

 この頃は「フリーシナリオ」の限界を、制作側も感じていたのかもしれません。



 しかしその後発売されたロマサガ1リメイクであるミンサガでは、さらに画期的な試みが行われます。

 それは、「周回することで初めて変化する要素が出てくる」という点。

 具体的には、「周回しなければ登場しないキャラクター」「周回して初めて発生するイベント」「周回して強化されるラスボス」などの存在です。

 そして「周回を重ねれば重ねるほど強くなれる自キャラ」も非常に大きい。

 リメイク前のロマサガ1ではアイシャで1周しか出来なかった自分がミンサガは30周以上やってしまっているのは、恐らくこの周回要素が大きいです。




 ただ、サガシリーズも時代と共に変化していきましたが……

 当然ながら、他のゲームも時代と共にどんどん変化していきました。


 ドラクエやFFのように


 ・主人公は固定で一人

 ・途中のイベントは順番を入れ替えたりスキップしたりも出来るが、基本的にメインイベントは全部通ることになる

 ・エンディングもほぼ一緒だが、サブイベントの結果によって一部変化することがある

 ・1周でだいたい全ての要素をコンプ可能


 このような形式のゲームは今も多いですが、ここから少し形を変えた作品も多くなってきました。

 例えば2018年発売の「オクトパストラベラー」。

 8人の主人公から1人を選ぶ、いわゆる複数主人公の形式です。良ゲーとの噂をきき、実際に自分もプレイしました。

 複数主人公という点から、いわゆるロマサガのようなフリーシナリオか?と思いましたが厳密にはそうではなく、普通にプレイしたら全主人公の全イベントを網羅してクリアすることになります。つまり1周でほぼ全てのメイン要素はこなせる(そして真エンド到達にはメイン要素全てのコンプが必須)

 イベントの順番はかなり自由に入れ替えができますし、8人のうち誰かを仲間にしないままのクリアも可能ですが、フリーシナリオというよりはどちらかといえばドラクエ・FFの形式に近い感じがしました。

 1周で主な要素はほぼコンプリート出来るというのが、そう感じた一因かも知れません。

 それから、「どちらかを選ぶならどちらかを切り捨てる必要がある、つまり二者択一の選択を迫られる」要素がほぼなかったというのも(サブイベントではそこそこありますがメインでは殆どない)



 さらに言えば、ガストから発売されたアルトネリコシリーズやアトリエシリーズなども、途中で結構な取捨選択を迫られる作品が多かったです(代表的なものだとフィリスのアトリエ(2016年)やリディー&スールのアトリエ(2017年)など)

 これらの作品は、基本はドラクエやFFの一本道形式に近いものの、途中の選択や行動結果によりエンディングがかなり変化する――

 いわゆる「ギャルゲー」に多いタイプと言えるでしょう。

 ただ、これらの作品の場合は決定的なルート分岐のポイントがはっきりしていることが多く、直前セーブをしていれば比較的容易に全EDコンプ可能でした。そこまでキツイ手順を踏まずに色々な要素が見られて、非常に楽しかった。

(アルトネリコは1も2もフリーズしまくりだったし、フィリスは前半の時間制限やその他モロモロがキツすぎたし、リディスーの真EDは自分のウッカリで周回必要になりましたが

 ……シナリオ構成とは別の話なので置いておきますw)



 またミンサガのように、周回を重ねて様々なルートやエンディングを見ることで変化していくゲームというのも今では多数存在します。

 そういうゲームだと暴露するだけでネタバレになりかねない作品も数多いので深くは触れませんがw、クで始まるあの伝説の名作、アで始まるあの名作もそうですね。

 ノベルゲームと呼ばれるジャンルにはそういった作品が多いイメージがあります。



 そして直近の事例で最も画期的だったのは何といっても

「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」ことティアキンでしょう!


 その前作「ブレスオブザワイルド」からそうでしたが、ゼルダシリーズ最新作たるティアキンはそれ以上に

「何でもできてしまうし、どこへでも行けてしまう」が凄すぎた。

 道具を駆使すれば空も飛べるし海も川も渡れるし、地上も地中も爆走できる。滝も昇れるし天井も突き抜けられるし、果ては時間まで戻せる!!(唯一出来ないのは潜水ぐらい)

 イベントをやるもやらないも自由。極端な話、初期の最低限のイベント終了後にラスボス戦へ直行することも可能だったりします。


 個人的に一番自由を感じたのが、


「このイベントをやったらあのイベントが消える!

 このバトルをしたらあの街が消える!」という事態がほぼ皆無!


 だった点です。

 つまり、サガシリーズでよくあったような「二者択一を迫られる事態」がほぼないにも関わらず、どこへ行ってもいいしどのイベントをやってもいい!という点でした。

 しかも敵の強さはサガシリーズと同じく、主人公の強さに合わせて強くなっていくシステム。だから技術さえあれば裸一貫でもラストダンジョンへの突入さえ可能!というわけです。

 頼れるものは己の技量と知恵のみ。それさえあればオープンワールドの広大な世界、どこへでも行ける!!

 逆に言えば、技量も知恵もないとどこ行ってもやられる。

 主人公はリンク一人だし、エンディングも基本的に一種だけですが……

 これこそが真なる「フリー」では!?と感じた次第です。



 あまりに長くなったので後編に続く!


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