答え合わせ

 結局、僕たちは冤罪だった。あの時の、龍の刺青をした男が犯人で、僕たちに罪を被せようとしていたらしい。ロケットのバッジの少年は、その男の犯行現場を見ていたようで、誘拐されていた。

 なんだか共感してしまうような境遇だ。

 リンタは逃げる最中、車に轢かれた。飲酒運転だったらしい。まだ傷は埋まらないが、僕たちには彼の残した音楽、そして居場所がある。ひとつひとつ思い出すように、僕はこの道を歩いた。

 道を歩いて、角を曲がった先に公園がある。ベンチに、コウメイと誰かが座っていた。今日はコウメイと会う約束だったはずだが、どうしたのだろう。

 しかし、僕はその「誰か」に見覚えがあった。あの、ロケットのバッジの少年だ。

「やあ、コウメイ」

「ああ、久しぶりだな。坂下夜明」

「その少年は一体どうしたんだい?」

「あ、あの、こんにちは」

 コウメイは微笑む。

「この前、合わせたい奴がいるって言っていただろう?」

「それがこの子?」

「ああ、俺たちのファン第一号だ。雑木林でずっと聴いていたらしい」

「ずっと、聴いてました」

「俺と和泉驎太が見つけて、何回か共に遊んだんだ」

 そういうことか。少年は照れくさそうに頭を掻く。だから、あんなところで殺害現場を目撃していたのか。

 そう思うと、最近は雑木林で練習していなかったのが申し訳なく感じた。

 僕たちは歩き出し、なんとなくコンビニへ向かった。目覚めのいい朝みたいな会話を交わす。

「そういえば、あの時どこで弾いてたの?」

「ああ、実は、あの居酒屋の店主こそ、この街にいる伝説のロックミュージシャンだったんだ」

「え」

 確かに、貫禄は伝説の名に相応しい。僕は店主がギターの音色を暴れさせるのを想像して、意外と似合うと納得した。

「だからなのか、あそこの屋上はライブができるようになっている」

「なんで」

 思わず吹き出す。ライブする機会もないだろうに。

 コンビニで僕たちはアイスを買った。当たりつきのやつだ。文化祭の時には当たらなかったが、今度こそ、と買ってみた。

 いつになっても味は爽やかで、僕の不安を吹き飛ばすようだった。

 そういえば、と僕は話し始める。ずっと前から、言おうと思っていたことだ。

「調べたら、小さい頃の僕を誘拐した犯人、息子がいたんだ」

「それがどうした」

「その息子が、リンタだったんだよ」

 僕は、店主の『どこまでが犯罪者なのか』という言葉を思い出す。

「リンタが、急に一曲、謝るような曲を作りたがったことがあったじゃん」

「もしかして」

 少年がアイスを美味しそうに頬張り、その後少し残念そうにした。ハズレだったみたいだ。

「そう。もしかしたら、僕に謝り違ったんじゃないかなって」

 リンタはもういない。真相は過去の中だ。確かに本当のことはわからないけれど、アイスの棒には三文字、「あたり」と書いてある。

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