第2話
GWが明けると嘘のように五人のグループラインが稼働しなくなった。それぞれのプロフィールを覗くと、俺の知らない人たちと身内のやりとりをしていた。みんな大学生になって大学生と話している。俺は今、食堂のカウンターで一人、期間限定の薄い豚肉ののった丼を食べている。
大学一年から週一でゼミがあるのはラッキーだと思っていた。人見知りの自分は定期的に同じ人と顔を合わせないと仲良くなれない。ゼミで五人のようなお互いをいじり合い、馬鹿笑いしそうな人のそばに近づいた。でもそいつらはすでにグループを作っていて、俺が入る余地はなかった。そうこうしているうちにどのグループにも属すことができなくなった。グループワークで発表するとなったとき、眼鏡をかけたいかにも高校のときにクラスで一番影の薄かったやつらに声をかけられた。拒否する権利もなく参加した。
堀内のラインの背景画像が変わった。男女七人が両手を横に広げてバランスを取りながらどこかの堤防の上を並んで歩いている写真。人間は黒いシルエットになっていてどれが堀内かがわからない。男女の区別くらいしかできなかった。
この写真を撮っているのが堀内だったらいいのにな。かろうじて仲間に所属しているけど、みんなからは疎外されがちでこれも写真撮る役目を押し付けられた。でもそれを言えないから背景画像でいかにも楽しんでます感を醸し出そうとしていたらいいのに。
肩を叩かれて後ろを振り返ると眼鏡をかけた三人が俺を見ていた。
「ここにいたんだ。ねえねえ。君の担当分してる写真とグラフ作成ってどれくらい進んでる?」
今度のグループワークのことを聞かれている。俺はしかたなしに参加させられたから残った役割を任されていた。
「ああ、うん、一応やった」
こんなやつらに好かれようとか思わないのに、今、唯一大学で話しかけてくれるのがこいつらしかいないから、どんな役割でもちゃんと果たしてしまう。
「あ、そうなんだ。じゃあそれ、送っといて。メールでもLINEでもどっちでもいいし」
うん、と言い終わる前に三人のメガネは俺の知らないアニメの話をしながら食堂を出て行った。
微かに聞こえたアニメのタイトル。俺はそれをグーグルの検索にかけた。YouTubeで違法に上がっていたので『後で見る』に入れておいた。
大学で再デビュー 佐々井 サイジ @sasaisaiji
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