第43話

 学園の三時限目が終わると男子生徒が盛り上がっている。


「今日転入してきた美人転入生見たか?」

「見たぞ、教室の外まで列が出来ていたよな」

「レイスちゃんか」

「アリシアさんやヨウコ並の美人だって聞いて俺信じてなかったんだ。そんなに都合よく美人は現れない、そんな事は夢物語だってな、でも、そこに夢はあったね」


「俺も生命力を吸って貰う為に列に並ぼうかな?」

「後輩の列に並ぶのは抵抗があるだろ」

「お前、一回レイスを見て来いって、見ればわかるから」

「そうだ、並びたくなる気持ちが分かるから」


「……そこまで言われると気になるな。見てくるわ」


 3人の生徒が教室を出ていった。

 今日も平和だ。

 こういうのでいいんだ。


 平和で何も起きない日常、それでいいんだ。

 足音が聞こえてさっき教室を出たクラスメートが走って帰って来た。


「マジで美人だった!」

「「だろ?」」

「ああ、あの子なら、レイスになら吸われてもいい、いや、むしろ吸われたい!」


 男子生徒が俺に向かって歩いてきた。


「ヤリス」

「昼以降、アリシアさんは回復魔法のお務めだよな?」

「そうだけど?」


「アリシアさんはいないか、都合がいい」

「ん?」

「一緒に美人後輩を見に行こう」


「いや、いいや」

「ヤリス、お前、ヨウコやアリシアさんレベルの美人は中々いない、そう思ってないか?」

「そうだけど?」

「いいから、騙されたと思って来てくれ、絶対に損はしないから」


「ま、待て待て、確かに美人なら見てみたいけど、でもその子をどうにか出来るわけじゃないだろ?」

「ヤリス、甘いな」

「何だよ?」


「レイスはゴーストのスキルを持っている。つまり、亜人スキル持ちだ。当然ヤリスのハーレム候補でもある」

「そんな話は一切聞いてないから、俺のハーレム候補かどうかは怪しい所だ」


「行こうぜ!」

「そうだ、絶対に損はしない!」

「わ、分かった分かった。ヨウコも見に行く?」


 ヨウコはコクリと頷いた。


「ヨウコも一緒に後輩見学だ」


 クラスの6人が束になって後輩の教室に向かった。

 教室には見物の人で溢れていた。


 教室の椅子にレイスがいた。

 レイスは薄い青紫色の髪をミディアムヘアで切り揃えている。

 亜人スキル持ちの特徴通り目は赤い。

 肌は驚くほどに白く体がうっすらと光っている。

 それが肌の白さを一層引き立てていた。

 背は小さめに見えるが胸元が開いており体は成熟している。


「美人だな」

「「だろ!?」


 レイスに向かって男子生徒の列が出来ていた。


「レイスさん、よろしくお願いします!」

「うん、でも、手を後ろに組んで欲しいなあ♡ 掴まれそうで怖いよ♡」

「分かった!」


 男が両手を後ろに組んだ。

 するとレイスが男子生徒の体を撫で回しながら生命力を吸っていく。

 光がレイスに流れていった。


「お、おおおおおおおおおおおおおおお!」


 レイスが座ったまま囁くような声で言った。


「ふふふ、凄く生命力が多いね♡ たくさん吸っちゃうかも♡」

「ふぉおお! もっとたくさん、吸って欲しい」

「じゃあねえ、いっぱい吸っちゃうね♡」


 レイスが男子生徒の胸やお腹を服の上から撫で回すとレイスに向かって光が流れていく。


「ああ、おいしいね♡」


 レイスが顔を傾けてほほ笑むと男子生徒の顔が緩んだ。

 レイスか、男が何を言われれば喜ぶか分かっているように見える。

 更に自分の事は触らせず、手を後ろに組ませてから生命力を吸う行動はゴーストというより小悪魔のようだ。


 見物に来たクラスメートが叫んだ。


「俺も並んでくる!」

「もう、レイスの生命力はいっぱいになるだろ?」

「構わん! それでも俺は並ぶ! 行動しない後悔よりもやって後悔したいんだ!」


 クラスメートがカッコよく見える。

 行動はおかしいが恥もかなぐり捨てて動ける男子生徒が羨ましく思える。

 その顔はまるで戦場に向かう兵士のようだ。


「生きて、帰って来いよ」

「ああ、行ってくる」


 クラスメートの男が列の最後尾に並んだ。

 そして俺の隣にいたクラスメートが得意げな顔を向けた。


「な?」

「うん、美人だった。認める」

「よろしい」


「並ばないの?」

「無理だろ?」

「……だよな」


 列は教室の外まで続いていた。


「てか、スキルの相性的にはヤリスが並んだ方がいい」

「いやあ、いいや、てかさ、みんな体調が悪くなるだろ?」

「そうかもな」


 レイスに生命力を吸って貰った男はぐったりとして席につき机を枕にして眠り始めた。

 でもその顔は満足げに見える。

 そして列の順番に来た男が両手を後ろに組んだ。



 ヨウコが俺のYシャツを軽く引っ張った。

 そのしぐさが可愛い。


「ああ、食事だよな?」


 ヨウコがコクリと頷く。


「うん、行こう」


 ヨウコが少しだけ笑顔になった気がする。

 前よりヨウコの表情で感情が少しだけ分かるようになって来た。


「皆は食事に行かないの?」

「俺は見ている。目の保養になる」

「俺もまだ見ているわ」


「そっか、ヨウコ、今日の食堂は空いていそうだな」


 ヨウコと一緒に食堂に向かった。



 ヨウコが食べる分のプレートを2つ両手に持って食事を盛りつけていく。

 俺はヨウコからプレートを受け取りテーブルに置いた。

 ヨウコは更に追加で2つのプレートに食事を盛りつけ席に着く。

 ヨウコの前にプレートが4つ、満足げな顔をしている。


 ヨウコはよく食べる。

 みんなからは「食べてるのに太らなくていいね」とか「私もあの顔と体で生まれたかった」と言われているけどそれは違う。

 ヨウコは回復魔法でかなりのエネルギーを消耗している。

 あれだけ頑張って魔法を使えばそれは太らないだろう。


 美味しそうに食事を食べるヨウコを眺めていると食堂が騒がしくなった。

 後ろを振り返ると転入生のレイスが食堂に入って来ていた。



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2024年9月27日 18:13
2024年10月4日 18:13
2024年10月11日 18:13

憧れの美人幼馴染にシャワー室で逆壁ドンされて我慢できると思う!?~前世から結婚不適格者だと思っていたのにヒロインとシタ挙句調教までしてしまいすいません~ ぐうのすけ @GUUU

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