第2話

見頃はもう2~3日後かとは思われるけど、蕾混じりの桜も、それはそれで美しく、趣があって良いものである。

春に浮かれ気分で順路に沿って歩いていると、母娘であろう2人が通路を塞ぐように立っている。


赤い色のコートを着た中年の女性が、

「今日は厚着して来て良かったわ~」

誰に向かって話している様でもなく、落ち着きなく繰り返し話している。

その傍らで、顔だけやたらに青白く血色の悪そうな、中学生位の女の子は、立ち入り禁止の柵を踏み越えスマホで写真を撮る事に夢中だった。


とりあえず邪魔なので、その親子を少しイラっとした顔で横を通り過ぎ去ろうとすると

「また雪でも降りそうだわね~」

と言いながら振り返ってきた赤コートと目が合ってしまった。

「・・・ええ・・・」

お互いに苦笑いして、私は順路に向き直して少し早歩きでその場を立ち去った。


軽い事故に遭った心待ちでトボトボ歩いていると、風の流れか、空気の塊の具合か、どこからともなく焼肉の匂いが漂った。

そこまで空腹でもなし、食いしん坊でもないが

五重の塔が、お菓子の家で、チョコレートパフェだったら美味しいだろうな、

ただ、ホタテのフライを食べた後なら、あんみつが食べたい気分になった。

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祇園に咲く桜 ウメノカオリ @umeno_kaori

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