祇園に咲く桜
ウメノカオリ
第1話
夏は浅く東寺の甘味屋には静かな風が吹いていた。
空の向こうを眺めていると、昔の彼女の事をふと思い出した。
「あなたは何を考えているの?」
何に対してか判らない、詰めるように聞かれた。
男の脳はリラックス状態では何も考えていない、ボーッとしてるだけなのだが
それを女に説明しても判るはずも無い。
彼女の目が寂しそうな目に変わった
あの時私の顔はどんな顔をしていたのかとふと思った。
盆の上の食べかけの白い上用饅頭の残りを口の中に放り込んだ、九州のお菓子「かるかん」に似た饅頭の皮の香りが広がった。味というのは香りが重要らしく、鼻をつまんで食べると、高いマグロも、安いマグロも味の差が分からないらしい。
ハイヌーン(お昼時)はまだ先なのに、食べる事ばかり考えている。
今日は厚めのホタテのフライにソースをタップリかけて白飯を食べたい気分で、口の中がホタテでしかなくなっている。
ヌルくなったお茶を一口飲んだ。
東寺の塔の後ろは綺麗な青空で
風は少し冷たく、線香の香りが心を包んだ。
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