偽愛布由宇和歌抄 第一巻/編纂:竜胆畏怖【第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門】

竜胆いふ

偽愛布由宇和歌抄 上巻

長月ながつきの 霧立宇佐乃きりたつうさの 楼閣哉ろうかくや 樵集怨こりつむあたを 恨可比母無うらむかひもなし


具麻無流くまなかる 香具哉望月かぐやもちづき 将湧出わきいでむ 休眠處女乃せいぼまりあの 加奈斯麻巻尓かなしままくに


具麻所尓有くまとなる 吾妹尓相瀬わぎもにあふせ 芥川あくたがわ 孤子等居庭こしらゐるには 経佐和之伎迦奈ふさわしきかな


吾母伊毛母わもいもも 朝毛等牟波あしたもとむは 於保家無久おほけなく 迫而名許曽せめてなこそ 告目白為目のらめしらさめ


奴婆多麻能ぬばたまの 悪乃百夜尓あきのももよに 背相そむきあふ 獅子狛犬之ししこまいぬの 伊波比廻いはひもとほる


奈流可尾能なるかみの 銃宇知登余牟がんうちとよむ 愛布由宇等えふゆうと 阿我屁放連隣等あがへひれりと 比等波斯良射良武ひとはしらざらむ


亀甲焼而かめくべて 讀礼之言柄よまれしことがら 殊而ことなりて 不異者ことならざれば 宇倍事等言可うべことといふか


煙称波けぶらねば 香岐而見有かぎてみえたる 明星与あかぼしよ 妹乃屍尓いものかばねに 愛布意斯多麻閉えふおしたまへ


芥川あくたがわ 鏡尓移かがみにうつる 独法師どくほうし 衣手染流ころもでしむる 紅涙くれなひのなみだ


住浮礼すみうかれ 来之方潜流こしかたかづける 芥川あくたがわ 令流千歳尓ながらへよちとせに 令染与吾之衣尓しめよわがそに


霧立而きりたちて 秋来良之あききたるらし 雖然さりとても 空能青吉之そらのあおきの 恨企迦奈うらめしきかな


野羅尓古のらにふる 菖蒲等名残あやめとなごり 波潮尓なみしほに 濡流々吾者ぬるるわれは 何乎可将手折無なにをかたおらむ


言能葉乎ことのはを 伊加尓可和周良いかにかわすら 魔法尓まじかるに 朝奈夕奈尓あさなゆふなに 比座巻期等尓ひざまくごとに


朝月あさづき 日向奥ひむかのおきに 立所見たてりみゆ 遠吾妹与とほきわぎもよ 看乍偲みつつしのはむ


葦垣之あしがきの 古難礼者ふるがたければ 吾妹子之わぎもこの 玉裳乃須十者たまものすそは 深雪尓乱武香みゆきにみだれむか


打靡うちなびく 芽萌巻見而めもえまくみて 春来奴等はるきぬと 名不知鳥なしらぬとりが 人不所知鳴ひとしれずなく


霞立かすみたつ 芥山乃あくたのやまの 哭苦鳥与なくとりよ 吾者不忘曽あはわすれじぞ 所凍留涙こゆるなみだ


妹愛真比いもえまひ 於母愛真思母与おぼえましもよ 荒殿乃あらどのの 花之愛真巻はなのえままく 吉許愛真世婆きこえませば


愛布由宇等えふゆうと 言津笑津いひつわらひつ 香具合衆国乃かぐうさの 八束百日二やつかももかに 成良六許曽乎者ならむこそをば


屁乃声等へのこえと 色許背知目いろこそしらめ 此曽己能これぞこの 人之観音等ひとがくゎんのんと 呼物也よぶものなり

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