第7話 月曜
次の月曜日、休み明けのだるい感じが教室中に漂っている朝、親友が後ろからやってくる。
「おはよう。」
急に声かけられて驚く。
「おはよう。」
私も答える。
「昨日写真撮れた?おじいちゃんからレンズ借りて撮ってたんでしょ。」
「うん、いいのが撮れたよ。」
「見せて見せて。」
私はスマホに入れた写真を見せる。
「すご〜い、大きく撮れるんだね。スマホの時の米粒とは大違いじゃん。」
まあ表情が見えるほどではないんだけれど、大きく写せたのを褒めてもらえて嬉しかった。
「そうかなぁ。でも頑張ったのでそう言われると嬉しい。」
「いや、これすごいね。これって連続写真じゃん。」
「試合の最後の方は慣れてきたので、上手く撮れた。」
「うまいうまいよ!カメラの才能あるんじゃん。何で投げる瞬間の写真何枚もあるの?」
「これちょっと体の向きとか手の向きが違うんだよね。投げるボールによって変わるのかなって思って。」
「うん、変わるって聞いているけれど、見ているだけじゃわからないよ。でもこうやって写真にするとわかるもんだね。」
「微妙な差だけれどね。」
「これ、うちのエースに見せちゃダメ?」
「ダメダメダメ! 何だか変な追っかけとかと思われそうなのでダメです!」
「きっと彼の投球に役に立つと思うんだけれどなぁ。」
「でもダメです!」
親友はまだ写真を次々に進めながら見ている。
「すごいねこれ、何枚撮ったの? あっ、これ。」
と言ってこっちを見てくる。昨日どきっとした彼の正面を向いた写真だ。
「あーーー!それは見ちゃダメ。」
と取り返そうとしたけれど、親友は逃げる。逃げながら言う、
「いい写真じゃん。でも視線きてないね。」
「だって私のこと見たわけではないから仕方ないじゃん。もう返してよ〜。」
「はいはいごめんね〜。」
私は返してもらったスマホを大事に抱えて親友をにらむ。
「ごめんごめん。でもそんな拡大した荒い写真じゃなく、野球部うちに撮りにきたら?」
「それはムリ!恥ずかしくてできない。」
「それだけ彼の写真撮っておいて恥ずかしいとはね〜。」
「だって…。」
「まあいつか撮りたくなったら言ってね。親友の願いぐらい叶えてあげたいじゃん。」
「ありがとう…。」
放課後になり、また彼の写真を撮りにいく。野球部のいるグランドではなく校内のあらゆるところからである。校舎裏、理科準備室、屋上、いろいろある。本とカメラを持ちながら彼が見えるところまで行って撮る。
たまにスマホに目を落とし、正面を見ている写真を眺める。
「いつか撮ってみたいな…。」
真っ直ぐこっちをみている写真はまだないけれどあのきれいな瞳を撮ってみたい。もちろん私をみている瞳でなくていいから…。
カメラの中 風月(ふげつ) @hugetu2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。カメラの中の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます