イマジナリーフレンド

たんぼの邪神

イマジナリーフレンド

 キミ、ここの入院患者かい?

 ここ暗くて気が滅入るよねぇ、これじゃ治るものも治らないってものさ。

 キミはどうして入院なんてしてるんだい?

 へぇ?友人を馬鹿にされてつい相手を殴っちゃったらそのままここに。

 そりゃあ大変だ、災難だったと言ってもいい。

 友を馬鹿にされて憤慨するというのは至極当然のことでキミは悪くなかっただろうに。それでこんなところに入れられちゃうなんてね。

 ちなみに友というのはキミの隣にいるその子かな?

 ならよかった、せっかくだから挨拶のひとつでもしときたいと思ってたんだ。

 ということで初めまして、キミとも今知り合ったばかりだしこれはキミへの挨拶も兼ねとこうか。

 それじゃ自己紹介も終わったところでキミに聞きたいことが、えっ私の紹介をしてないだろって?

 それは困った。キミに質問をする権利をあげたつもりはなかったし私には紹介できる自己もない。

 でもこのままだと困るから私は私の話を続けさせてもらうよ。

 私はキミにいくつか聞きたいことがあるんだ、回答は強制ね。

 それじゃ始めよう。

 

 ──キミの友人の名前は?

 ──キミの友人はどんな性格?

 ──キミの友人と出会った時期は?

 ──キミと友人との思い出のエピソードを教えて?


 

 ──キミの友人がetc………………


 


 さて、長々と聞いて悪かったね。悪気はないけどこれが最後の質問だ。

 ──キミの友人の声を最後に聞いた日はいつ?

 そうかい、やっぱり。

 別に驚きはしないさ、ここはそのための施設だ。

 キミにとっては大いに不満だと思うがね。

 でも安心してくれよ、これは私にとっても大いに不満さ。

 だってキミの大切な友人の声を聞けないんだ。残念という他ないだろう?

 それに急にひとりぼっちにされたキミを見て可哀想と思わないほど私は薄情じゃないさ。

 私とキミは知り合い以上の関係だからね。

 こんだけ話をしたんだ、なんならもう恋人と言っても過言ではない。え?過言?酷いなぁ。


 

 ……おや、大人の足音が近づいてくる。時間的に夕食のようだね。

 他の人間に私とキミが話してるところを見られるのは少々マズイかな?

 仕方ない、今日は退散するとしよう。

 そんな顔しなくてもキミが望むのなら明日も明後日もその先も私はキミに会いに来るさ。

 鍵のかかった扉も鉄格子の嵌った窓もキミに会うためなら私にとってはなんの障害にもならない。

 もう時間がないね、それじゃ私はこれで。



 

 いつかキミの友人の声が聞こえたら教えてくれ。そのときに色々考えるから。

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イマジナリーフレンド たんぼの邪神 @tanbonojasinn

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