とくに二話のザイルパートナーがすごい。
ここに描かれたおぞましさや途方もない無惨さ、それに無慈悲さはクトゥルフ神話特有のもので、この恐怖の神話が作者の細胞レベルまで染み込んでいるのがうかがえる。
これほどスケールの大きい恐怖を短編で描いたことに感嘆する。
また「おそるべきなにか」の存在を感じさせるだけで描写せず、ひたすら読者に想像させる手法はまさにクトゥルフ神話の語り口そのもので脱帽した。
一話完結で一話ごとに恐怖の味わいがちがう。
クトゥルフファンはもちろん、むかしのテレビシリーズ『トワイライト・ゾーン』が好きなかたにもぜひおすすめしたい。
自分はアラビアン・ナイトのように毎晩一話づつ読んで、この稀有な恐怖譚を愉しもうと思っています。