長過ぎる年月

「思えば、俺は長く生き過ぎた」

 男は呟いた。

 三十と六つ、決して長いとは言えない筈のその人生が男にとっては長過ぎた。

 不意に冬の風が男の頬を掠めた。

 風の冷たさは生の証であり苦痛の源だった。

「何も感じずに生きられるなら人生はそう悪くない」

 男は再び呟き、そして瞼を閉じた。

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嘆遍醜 -即興散文小説- 貴音真 @ukas-uyK_noemuY

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