彼女は空手部!
崔 梨遙(再)
1話完結:1300字
僕は銀閣寺清麻呂。私立銀山学園の3年生だ。僕は今、恋をしている。相手は同じクラスの鷹柳多香子だ。多香子は1年の時から空手部に所属している。多香子と一緒に放課後を過ごしたいからということで、僕も空手部に所属していた。そう、僕は1年生の時から多香子に惹かれていたのだ。
多香子は強かった。小学生の時から空手を習っているとのこと。彫りの深い美しい顔立ち、166センチのスラリとしたスレンダーのボディー。スレンダーなのに胸はある。まさにパーフェクト! 高校1年の4月、僕は一目惚れをしたのだ。
それから丸二年、3年になっても何の進展も無い。幸い、多香子が他の誰かと付き合い始めたという話も無い。モテるのに。
男子空手部と女子空手部にわかれていたが、たまに男女交流戦がある。僕は3回多香子と対戦したが、3回とも上段蹴り1撃で僕は沈んだ。痛いなんてものではなかった。だが、対峙した時に多香子のシャンプーの香がしたのは心地よかった。
僕は、全く強くなれなかった。帯は白帯、足は上段まで上がらず中段か下段しか蹴れない。しかも、威力が無い。1年生にも負ける。僕は最弱だった。
“だったら、下段蹴りを極めよう!”と、僕は下段蹴りばかりするようになった。すると、“地味に痛いから、清麻呂と組み手するのは嫌だ!”と避けられるようになった。
多香子の話に戻るが、多香子は昨年の個人戦では準々決勝で敗退している。誰もいない非常階段に座り込んで泣いていた多香子を、僕は抱き締めて慰めたかった。だが、それは出来なかった。僕は多香子の恋人ではなかったから。今年、僕は多香子の恋人になってやる!
大会が始まった。僕は初戦敗退だったが、僕のことはどうでもいい。僕は多香子の試合に注目した。順調に勝ち上がっていったが、残念、決勝で敗れた。また非常階段で泣いている多香子に僕は近付いた。
「なんやのん? 用が無いなら、どっか行ってや」
「僕は鷹柳さんを慰めたい。でも、出来ない。恋人じゃないから。ねえ、僕を恋人にしてよ。僕は鷹柳さんを慰めたいから」
「ほな、慰めてや」
「ありがとう、ほな、隣に座るで」
僕は、多香子が泣き止むまで多香子の背中をさすり続けた。やがて、多香子が振り向いた。僕は多香子にキスをした。
僕達は、テーマパークでデートすることになった。楽しんでいたが、大学生らしい3人組に絡まれた。
「お姉ちゃん、そんなしょぼい男なんか捨てて、俺達と遊んでくれや」
「待て、僕はこう見えても空手部やぞ!」
「それがどないしたんや?」
「行くぞ!」
ペチン。
僕の渾身のローキック。リーダー格の男がガクッと膝を落とした。
「地味に痛えじゃねえか!」
「この野郎!」
僕は、残る2人に殴られ蹴られた。
シュッ!
残った2人に多香子の上段蹴りが決まった。結果、3人共ダウンした。
「おぼえてろよ!」
3人組はよたよたと去って行った。
「清麻呂、大丈夫?」
「大丈夫。ごめん、カッコ良く助けられなくて」
「ええよ、清麻呂もいつか強くなれるから。それよりも、立ち向かってくれたことが嬉しかったわ。はい、立って。清麻呂、よく頑張ったなぁ」
「ほな、ご褒美のキスをしてくれ」
「何を言うとんねん!」
多香子のツッコミは言葉でも手でもなく、上段蹴りだった。
彼女は空手部! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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