逆襲

北折 衣

逆襲


木漏れ日の差し込む穏やかな森で、彼らの最後の会合が行われていた。

「我々はその昔、食料でしか無かった」

リーダー格の彼は木の幹に軽く腰かけ、静かな調子で語り始めた。何万もの彼の仲間がそこに集結し、彼に耳を傾けていた。辺りにはさわさわと風が吹く音だけが聞こえる。


「我々の祖先が持っていたのは肉体を守る鎧だけだった。だが数百年の時を経て我々は奴らと同等の知能を得、奴らも気付かぬ間に文明を築いた。」森の中は驚く程に静かで、まるで彼ら以外そこに居ないようだった。彼は左頬の傷を見せて言った。


「長い間、我々は奴らの残酷極まりない虐殺に耐えてきた。故郷を失ったもの、家族を奪われたもの、ここに今集う同士諸君の中にも居るはずだ。」

皆彼の言葉に呼応するように身体を震わせ、熱気が高まっていく。少し間を置いて彼は叫んだ。

「我々の体が奴らの脳に似たのは何故だ?」

怒りを抑えつつも、捲し立てるような口調だ。1人の若者がそれに応えた。

「成り代わるためだ!」


彼はまた問う。「我々の敵は誰だ?」

「憎き草食共だ!」「我々を食らう全ての野獣だ!」応える声は増えていく。


「全ての頂点に君臨するのは誰だ?」

『我々だ!人間じゃない!我々が頂点だ!』

場の熱気は最高潮に達し、彼らの殻がぶつかり合う音で空気が震えた。

その時1匹のリスが掛けてきてリーダー格の彼に跪いた。「出陣の時です。」彼はリスに持ち上げられ森の出口、先頭へと躍り出る。

「リスの体はどうだ」彼の口調は答えを聞く前から信頼に溢れていた。リスが一声鳴くと整列した何万匹ものリスたちが駆けてくる。「ご覧下さい全て万全です。皆乗りこなしています。」自信に満ちて言うリスの首元にはくるみの殻がめり込んでいた。

リスがリーダーの彼を天に掲げる。

「ミックスナッツに放り込まれた同士よ、リスに捕食された同士よ、割人形で弄ばれた同士よ、全ての''割られた''同士たちよ、我々は今から人間に成り変わる!諸君、無念を晴らすのだ!」

雄叫びと共に、くるみの軍勢は中国の野を走り出した。

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逆襲 北折 衣 @Etizolam

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