第94話 涼也君ってめちゃくちゃチョロそうだし
体育倉庫に閉じ込められてから一夜が明けてあっという間に放課後となりついに演劇練習の時間がやってきた。と言っても今日はまだ衣装や小道具などもまだ全然揃っておらず場所も教室のため軽い台本の読み合わせレベルだが。
白雪姫役の俺と王子様役の玲緒奈、魔女役の白銀さん、小人役数人という配役でひとまず最初から最後まで台本を演じながら読み進める。
「今の演劇の通しを見た感じ玲緒奈ちゃん以外は皆んな台本を読んでる感じがあまりにも強過ぎて違和感が凄まじかったっていうのが正直な感想かな」
俺を含めた主要キャラを演じるメンバーはそれぞれ自宅で練習してきたわけだが演劇の監督を引き受けてくれたクラス委員長の
まあ、白石さんは現役の演劇部員のため今日初めて通しの練習をした俺達のレベルが低く見えるのは当然だ。それに今日は練習初日な訳だしこういう評価になりそうな事は初めから分かり切っていた。
「何で玲緒奈だけそんなに上手いのよ? 私もそれなりに練習してきたつもりだったんだけど」
「うーん、やっぱり才能かな?」
「ドヤ顔なのがなんか腹立つわね」
俺の前で玲緒奈と白銀さんはそんな会話をしている。夏休み前にあった財布が盗まれた事件の件で玲緒奈と一悶着あった白銀さんだがあれが原因で仲が悪くなるような事は無かった。
ちなみに夏休み前の最終日に白銀さんは俺に対して頭を下げて謝ってくれたためあの事件は既に解決済みであり禍根なども特に残っていない。
むしろ白銀さんは多くのクラスメイトが俺に極力関わろうとしない中で普通に接してくれる数少ない人間だったりする。多分俺に対する罪悪感があっての行動だろうが。
「とりあえず現状のレベルも分かったし、これから私がビシバシ指導していくから皆んな覚悟しておいてね」
白石さんはメガネをかけた文学少女的な外見で大人しそうなイメージを勝手に持っていたが意外に熱血なところがあるらしい。
それから何度か休憩を挟みつつ練習を続け今日の練習は終わりとなった。白雪姫というメインキャラの俺には特に演技指導が入ったためかなりへとへとだ。玲緒奈と一緒に靴箱へと向かっていると不満そうな表情を浮かべて話しかけてくる。
「涼也君、さっき美波ちゃんに見惚れてたでしょ」
「どこを見てそう判断したんだよ?」
「だって美波ちゃんと五秒以上も見つめ合って話してたじゃん」
玲緒奈はそんなとんでもない事を言い始めた。どうやら演劇のフィードバックを聞くために顔を見て話を聞いていただけで見惚れた認定されたらしい。
「五秒以上顔を見つめ合っただけでアウトってのは流石に厳し過ぎやしないか?」
「私的には三秒以上でアウトかな」
「それだと誰かと会話するたびに見惚れる事になるだろ」
「うん、だから心配してるんだよ。涼也君ってめちゃくちゃチョロそうだし」
俺がチョロいというのはぶっちゃけその通りのため否定のしようが無いが、一体玲緒奈は何をそんなに心配しているのだろうか。
「何が心配なのか分かりやすく教えてくれないか?」
「実は八秒以上見つめ合うと恋に落ちるって研究があってさ、私は涼也君が叶わぬ恋をして苦しむ姿を見たくないから善意で言ってあげてるの」
「いやいや、完全に俺が振られる前提で話してるけどもしかしたら叶う恋だってあるかもしれないだろ」
「もしかして涼也君には叶って欲しい恋があるの?」
「私とお姉ちゃんに詳しく教えて欲しい」
俺は玲緒奈といつの間に隣にいた里緒奈から肩をがっしりと掴まれる。左右から掴まれた肩は爪が食い込みそうなほど力がかかっており普通に痛い。これ以上被害を拡大させないために俺はとりあえず弁明する事にする。
「い、いや。今のはあくまでそうなるかもしれないっていう仮定の話であって特定の誰かがいるわけじゃないからな」
「何だ、仮定の話だったんだ」
「驚かせないで欲しい」
ひとまず弁明した事によって二人は落ち着きを取り戻してくれたらしい。これでようやく肩が痛くなくなったため一安心だ。
そしてここ最近うっかり失言する事が多いため本当に注意しなければならないだろう。このままのペースで失言を続けると体が持たない。
「まあ、涼也君の恋が上手くいく可能性はほとんど無いと思うけどね」
「涼也と付き合ってくれそうな女の子はこの世界で三十五億人中二人くらいしかいない」
「三十五億人中二人ってほぼゼロって言ってるのと一緒じゃん……」
玲緒奈と里緒奈は相変わらず俺に対して容赦ない口撃を仕掛けてくるな。てか、その二人という数字の根拠は一体何なのだろうか。気になって聞いてみたが玲緒奈と里緒奈はそのうち分かる日が来るとだけ言って教えてくれなかった。
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