蛙化現象を起こした彼女に理不尽にフラれた俺は失意のどん底に落ちる でも俺の事を大大大好きな許嫁ができたので彼女と幸せになります あれ、蛙化現象を起こした元カノの様子が…?

栗坊

俺は蛙化現象を起こした彼女に理不尽にフラれる

 俺の名前は今河氏郷いまがわうじさと。どこにでもいる普通の高校2年生だ。でも同年代の男子より少しだけ自慢できる所があるとするならば…それは彼女がいるって所かな。


「えっと…どこにいるんだ?」


 只今俺はデートの真っ最中。


 午前中に彼女と今トレンドの映画を鑑賞し、昼になったので昼食を取ろうとフードコートへ移動する。


 フードコートに着いた俺たちは役割分担として彼女には席を確保してもらい、俺自身は飯を買いに行った。


 昼食を購入した俺は2人分のカルボナーラを持って彼女の元に向かおうとする。ところが本日は土曜日なだけあって他の客も多く、フードコートは混雑していた。そのため彼女の姿を中々発見できなかった。


 キョロキョロと辺りを見渡しながら彼女の姿を探す。


 …おっ、いた! 


 俺はフードコート西側の端にあるテーブルに陣取り、スマホをイジっている彼女を発見した。


 彼女の名前は原西葉子はらにしようこ。俺と同じ高校の2年生だ。


 葉子とのなれそめは1年生の時に隣の席になった事だ。それから何かと話すようになり、俺は明るくて面白い彼女に少しずつ惹かれていった。


 そして高1の春休みに思い切ってデートに誘い、そのままの勢いで告白。葉子は俺の告白を受け入れてくれ、晴れて付き合う事になった。


 今は5月なので、彼女とは1カ月ちょい付き合っている事になる。今回で早5回目のデートだ。


「お待たせ! 土曜だから混んでるな」


 俺は葉子が座っているテーブルまで移動し、対面の席に座ると購入したカルボナーラを彼女に差し出す。北海道産の濃厚な牛乳を使った特製カルボナーラらしい。葉子が食べたいと言ったので買ってきたのだ。


「さぁ、食べようか」


「………」


「葉子…?」


 だが葉子はカルボナーラには目もくれず、引き続きスマホをポチポチしている。


 どうしたのだろうか? いつもならすぐに食べ始めるのに。


 俺が葉子の行動を疑問に思っていると、彼女は顔を上げてとんでもない事を口にした。


「ねぇ氏郷。あたしたち別れましょ?」


「は?」


 俺は彼女が放った言葉の意味が一瞬理解できなかった。


 「別れる」って…つまり俺との恋人関係を解消するって事か? どうしていきなり…? 彼女とは今まで良好な関係を築けていると思っていたのに…。


 自分で気が付かないうちに何かとんでもない事をやらかしてしまったのだろうか?


 葉子からいきなり別れを告げられ俺は困惑する。


「えっと…どうして? 俺、葉子に何かしたかな?」


「氏郷…さっき私を探す時にキョロキョロしてたでしょ?」


「えっ?」


「あれ、凄く気持ち悪かった」


 …どういう事だ? 人を探している姿が気持ち悪い? 


 …意味が分からない。


「それと注文する時に『濃厚北海道産牛乳を使ったとろとろクリームのデラックスカルボナーラ』ってメニュー名を全部読んでたでしょ。アレも鳥肌が立つぐらい気持ち悪かった」


「………」


「あとさ、私本当はカルボナーラじゃなくて味噌ラーメンが食べたかったのに! 私の気持ちを汲んでくれなかったよね?」


「そ、それは…最初に葉子がカルボナーラを食べたいって言ったんじゃないか。だから俺はカルボナーラを買いに…」


「うるさい! 口答えすんな! もうっ本当に無理! 気持ち悪い!気色悪い!キショイ!キモイ!」


 彼女はゴキブリでも見るかのような目つきで俺を睨みつけた。


「来週学校で会ってもキショイから話しかけてこないでよね。あっ、スマホの連絡先も消してよ。私も消すから。なんでこんなキモイのと今まで付き合ってたんだろ…。ホントあり得ない。じゃあねチー牛!」


 彼女はそう言って立ち上がると自分のバックを持ってフードコートから出て行ってしまった。


 俺は彼女にフラれた意味が理解できず、しばらくの間そこで呆然ぼうぜんとしていた。


 こうして俺は理不尽にも彼女にフラれてしまったのであった。



○○〇



「はぁ…」


 週明けの月曜日、俺は学校に登校すると自分の席に座りため息を吐いた。


 あれから家に帰って何度も葉子にフラれた理由を考えたが、俺には理解が出来なかった。


 自分を探している姿が気持ち悪かったってどういう事なんだろうか?


 …俺の身だしなみがダサかったとか? 


 ファッション雑誌やアパレルショップの店員さんの意見を参考にして服や髪型をセットしたのだが…そんなにダメだったのかな?


 …でもそれなら今までのデートですでに見切りをつけられているはずだよな? 


 そもそも本当に俺の身だしなみがダメだったのなら、付き合う前の告白をOKすらしていないと思うんだが? うーん…どうしてフラれたんだ。


 考えども考えども答えは出てこなかった。


「よっ! どうした? 暗い顔して」


「孝弘か」


 このウルフカットをした浅黒い肌の男は高野孝弘たかのたかひろ。俺とは小学校時代からの腐れ縁で親友である。付き合いも長いだけあって、コイツとは何でも話せる仲だった。


 丁度良かったので俺は一昨日葉子にフラれた件を彼に話してみた。


「…多分それは『蛙化現象』って奴じゃないか?」


「『蛙化現象』…って何?」


 『蛙化現象』。初めて聞く言葉だった。俺は言葉の意味を孝弘に尋ねる。


「あ~…。無茶苦茶簡単に説明するとだな…『好きな人のささいな行動に気持ちが冷めてしまう事』かな。元々は違う意味だったらしいが、それは今はいいだろう」


「『俺が葉子を探している姿に冷めた』って事? なんで?」


 …ますます意味が分からない。相手を探している姿に冷めるって何だ?


「これはあくまで俺の予想なんだけどさ。葉子ちゃんは多分お前に自分の居場所をスパッと見つけて欲しかったんじゃないかな? 自分の彼氏だから。でも実際のお前は葉子ちゃんをスパッと見つけられなかった。そこに葉子ちゃんは冷めた…と」


「えぇ…。でも一昨日は土曜日で俺たち以外にも客が沢山いたんだぞ? その中でスパッと見つけるって難易度高くないか? 超能力者じゃあるまいし…」


「ちょっと酷い言い方をするとな、葉子ちゃんはお前に自分の理想の彼氏像を押し付けていたのさ。でもお前はその葉子ちゃんの理想から外れた行動をとってしまった。だからお前に対して拒絶反応を起こしたんだ。本来ならこれは勝手に自分の理想をお前に押し付けた葉子ちゃんが悪いんだが…葉子ちゃんの方も自分がそんな器の小さい人間だという事実が受け入れられずに、相手が悪い事にしてその責任をお前押し付けたってワケ」


「つまり…葉子が勝手に妄想して勝手に幻滅したって事?」


「そういう事。まだ精神が成熟してなくて幼いんだよ。彼女は少女漫画のお姫様なんだ。まぁ、蛙化現象でフラれたのは気にしなくていいと思うぜ? お前に非があった訳じゃない。事故にでもあったと思って次の女に行けよ」


「そう言われてもな。実際へこむわ…。初めての彼女だったんだぜ?」


「…しゃあねぇなぁ! 今日は俺が奢ってやるから放課後何か食いに行こうや。それで元気出せよ親友!」


「孝弘…お前のそういうとこ、好きだわ」


 蛙化現象について理解はできたが納得は出来なかった。でも孝弘の助言も一理ある。いつまでもクヨクヨしてても仕方ないしな。


 俺は初彼女にフラれた事をなんとか吹っ切ろうとした。



◇◇◇


※当作品は「お試し連載」となります。1週間ほど連載して評判が良いようなら本格連載に入ります。


※投稿予定

10/5(土)~10/11(金)は1日2話、7時と19時に更新します。10/12日(土)のみ7時に1話のみ更新。計15話。


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蛙化現象を起こした彼女に理不尽にフラれた俺は失意のどん底に落ちる でも俺の事を大大大好きな許嫁ができたので彼女と幸せになります あれ、蛙化現象を起こした元カノの様子が…? 栗坊 @aiueoabcde

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