第5話 曲の評価


「やはり、その道に評価してもらうほかあるまい」



 ボナンス氏はすぐに一人の音楽家に連絡を取った。



 招かれた彼は世界的に有名な作曲家で、ボナンス氏の友人でもある。



「まさかあなたがあんなに興奮気味に連絡してくるとは、思いもよりませんでしたよ。いったいどういうわけです?」



 ボナンス氏は事情を説明した。



「なるほど、まさかあなたに作曲の才があったとは知りませんでした。ぜひ見せていただきたいです」



 ボナンス氏は束の楽譜を手渡した。



「こんなにずっしりと・・・! なぜ早く言って下さらなかったのです?」



 笑いながら作曲家は楽譜に目を通していく。




 しばしの沈黙。



 作曲家の表情が変わっていく。



 笑顔、真剣、困惑、驚愕、感嘆、と感情が目を見ているだけでもわかるほど激しく変化していく。




 そして最後の楽譜を読み終え、小さく息を吐き、ゆっくりとボナンス氏を見つめ口を開いた。



「これはすごい! 我々作曲家はある種調った旋律を作ることにしているが、あなたは全く違うようだ。新時代の作曲家に他なりませんな!」




「そうか! そう言ってくれるか!」



 ボナンス氏は顔を真っ赤にして叫んだ。



 高らかに上がる拳。



 彼の中に今後の音楽家としての夢が一気に膨れ上がった。




 彼の興奮に呼応するように、作曲家も興奮気味に話し出した。





「これらの曲は、すべて音がずれているのですよ! 音痴の人が歌うのを記録したらこうなるだろうが、譜面の段階から音がずれている曲を作れるのは天才というほかない!」



 興奮した作曲家は止まらない。



「一体どうやったのです? 楽譜の状態からここまで音をずらして、曲とし完成しているものを大量に作るなど現代の音楽家で創れる者などいないですよ!」





 結局それらの曲は後にそんな理由で注目を集め、少々有名になったのだが、その時そう興奮する音楽家を前にしたボナンス氏は目を見開き、にんまりと口角を上げたまま、それ以上何も言葉にしなかった。












*読んでいただきありがとうございました!

読んだ足跡を残していただけると、後々読みに行けるので、作品書かれている人がいましたら是非教えてください!

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作曲の天才〜資産家の作曲家への夢〜 赤坂英二 @akasakaeiji_dada

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