第4話 その主張、異議あり!


 ーダンジョン裁判当日ー

 ダンジョン迷惑防止条例の裁判は例外的にダンジョン内で行われる。


 被告の探索者が暴れても一般人に被害が及ばないようにという措置である。


「被告人大原祥子は、同じパーティの岡本真一を故意にダンジョン内に残しモンスターを利用した殺人を行った事で間違いありませんか?」


「原告側の主張を否認いたします」

 大原側の弁護士が罪状認否に対して完全に否定した。


 成神は岡本側の親族から依頼されている。

 つまり大原側は敵という事だ。


 故意に残したのではなく、岡本本人が残るから逃げろと言ったという主張である。


「ふむ、死人に口無しとはよく言ったわけで、言ったか言わなかったは完全に水掛け論になりますね」


 その言葉に相手側の弁護士はニヤリと笑う。


「という事で、証人を用意しました。

 歩君、テイムしたモンスターをここで出してくれないか?」


「え!あ、はい」


「うわぁぁぁ!」

「何考えてるんだお前は!」

「よりによってヒトタケ連れてくるなんて正気じゃない!」

 場内が騒然となる。


「静粛に!静粛に!」


「最近発表された論文なんですが、ヒトタケには記憶力も知性もあるそうで、特に寄生した人間の脳内情報を保存出来るらしく……」

「それを伝達する能力がヒトタケにはないだろうが!」

 相手弁護士が大声で反論する。


「テイマーは適性が高くなるほど自分のテイムモンスターとの意思の伝達が詳細化していくのをご存知ですか?」

「それがどうした?」


「私の部下の適性はSSSです。

 一般的な会話レベルで意思疎通ができます」

「それを私達に伝える方法は無いではないか?」


「古典的ですが、こういう物を用意しました」

 成神は五十音表を持ち出した。


「それでは、死んだ本人に証言してもらいましょう」


 お、れ、は、こ、ろ、さ、れ、た


「うわぁぁ!」

 被告人の大原が突然ヒトタケに襲いかかる。


 その拳が届こうとした瞬間。


 パシッ!


「そうか、君も、話し合いなんて野蛮な手段より暴力で穏便に解決するのを望むのだね、実にイイ」


「ギャァァァ!」

 掴んだ拳をそのまま握り潰した。

 前屈みになった顔に、反対に手でアッパーをいれる。


 ー裁判後ー

「ふむ、また罰金で弁護料がなくなってしまった」

「やり過ぎですよ、成神さんは!」


「このままだと最悪、ダンジョン探索で生活費を稼ぐしかなく成るな」

「むしろなんでそっちが本業じゃないのか分からないのですけど」


「法治国家に置いて、法は絶対なのだよ。

 私はその……」


「はいはい、次頑張りましょ」


 成神法律事務所、日本で二人しかいないダンジョン専門の弁護士の事務所だ。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 長編も書いているので良ければ見てください!

 https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826


 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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ダンジョン裁判!法治国家の規律と秩序を守る為、今日も私の拳は血に染まる。 山親爺大将 @yamaoyajitaisho

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