二十首連作 タイトル「移住」

第1話

里山で旬を食べてる三年目東京生まれ東京育ち

移住して最初に決めたマイルール「嫌われたってこちらは好き」と

寅さんに教わったのは「方言を早く覚えて友を作れ」だ

落石に注意するのは崖じゃなく路上の石と知って納得

田舎者なんていうのは街に出て自己防衛するパワーワード

若者の流出止める気があれば光回線くらい敷いてよ

雪が溶け花咲く時期を知ったんだ梅は光、桜は気温と

わからない菜っぱをもらい茹でてみて味噌汁の具に出来るかがカギ

干し柿を全部一口づつ食べる猿親子は屋根で勝ち誇る

たけのこかもう竹なのか微妙だがとりあえず茹で噛み確かめる

多種すぎる山菜レシピ知らなくて先ず天麩羅とおひたしにする

低空で女王蜂を捕食する燕のたくましさあさましさ

カモシカがこっちを見てる表情は顔芸なのかその眉毛とか

コンビニは信号のない路くだり気温3℃は低い集落

熊鈴が一年生に配られる下校時間は鈴の合奏

愛犬がマムシに噛まれ顔腫らす獣医驚きもせず平常

四駆しか車にあらず雪山に挑戦者圏外に気づかず

集落は電気柵にて区切られたアトラクションのビリビリ迷路

谺する声は何だと探る日々鹿とキジにはもう慣れてきた

この地にはコロッケそばがないらしいタイパとか立ち食いとか無縁