第32話 霧視点

 私は今でも思い出す。好きな人から無理やり奪った唇を。


 彼とは小学生か中学生の頃に喧嘩をしてしまってからずっと疎遠の状態だった。多分喧嘩になった原因は私に会ったんだと思う。

 だって彼が私を傷つけるようなことをするわけがないと断言できるからだ。


 疎遠になってからすぐに私はものすごい後悔に苛まれた。あの時、まだ私は幼かったんだ。精神がまだ子供だった。

 今まで彼に何度も救われてきたことをまるで忘れてしまっていたかのように彼を突き放してしまったから。


 そんな私も高校生になって、それでも彼に近づくことが怖くて仲直りするのを後回しにしてしまっていた。

 だけどある日、私に転機が訪れた。


 昼休み、普段通り友人と昼食をともにしていたら結構可愛い女の子が私に用事があるといって訪ねてきた。


 周りの男子曰く彼女は学校の中でも有名人らしい。あんまり好きじゃないけど、五天皇の中に一人らしい。本当に好ましくない二つ名だけど。でも高校の中である程度力になるものだったから無視していた。


 彼女はどうやら彼、藍木隼に用があるようだった。隼がある女の子に数えきれないくらい告白していたという話は本当だったのだ。


 流石にその話を聞いたときは驚いちゃったけど、ちょうどいいと思った。だって隼と話す機会をゲットできるチャンスだったから。数年間すれ違っても会釈するくらいの距離感になっていた幼馴染と話すチャンス。


 絶対に逃がすわけにはいかない。彼女、名前は青水さんといったか。なんと彼女は隼が告白していた相手ご本人でまさかの振ったことを後悔しているらしい。

 

 意味が分からなかった。そもそも隼が彼女に惚れている時点でイライラしたけど、あんないい男な隼を何十回も振るのが信じられなかった。


 でもまあいいかな、とも思ったけど。


 隼の性格は長年疎遠になっていた私でも分かっているはず。きっと彼のことだ、彼女のこと諦めたのだろう。

 

 都合がいい。彼は一度決めたことは絶対に曲げないから。

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100回目の告白を失敗した俺、二度と告白しませんと告白しに行くと相手の様子が何かおかしい ミナトノソラ @kaerubo3452

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