第31話

 やはり二次元は正義だと、いつも思う。だって彼らは創作物だから俺たちを裏切ることは絶対にない。

 アニメの中のカップルたちはそうなるべくして生まれたのだから、三次元を生きる俺たちに口を出す権利はないし、そもそも出そうと思わない。


 俺はあまり寝取られというジャンルを好んでいない。だって想像してみてほしい。付き合って仲良くやっていたと思っていた彼女が自分の知らないところで他の異性に奪われているのだ。


 まだ創作物の中では一ジャンルとしてギリギリ許せる(俺はあまりだが)。たまに深夜アニメでも、寝取られ、とまではいかないが連れ去られたり、監禁させられて一歩手前まで行く。


 本当にそういうシーンは見ていてイライラする。俺だけかもしれないが、アニメの中でカップルとして成立している時点で他の男とか女とかが出てくるのはいらつくんだ。

 誰か分かる人いないだろうか。いや、そもそも自分の語彙力がなさ過ぎて何いってるか分からない人の方が多いか。


 ここ五、六年でブイチューバーというものも流行ってきている。初期は馬鹿にされることもあったが今はメジャーな存在として受け入れられてきているとか。


 もちろん俺にも推しがいて…大手事務所所属の赤絵こころちゃんだ。チャンネル登録者は100万人に上り、事務所の中では五番目に多い数。


 一番上に300万くらいの化け物がいるが、その人は例外だ。


 こころちゃんは主に昼と夜に活動していて、昼はいつも小一時間ほどの配信をしている。

 その配信時間と、うちの高校の昼休みの時間が丁度重なっているから今こうやって見ることが出来ている。


 ブイチューバ―とアニメで違うところがあるとすれば裏切られる可能性があることだ…とはいっても裏切るという言葉を使うのはほんの一部で、みんなだって分かっているはずだ。


 ブイチューバーの中身は普通の一般人だと。一般人なら彼氏がいてもおかしくないということを。

 普段配信で楽しませていただいているのだから、彼女らのプライベートまで口を出すのはお門違いだと思う。


「藍木、何見てんの?」


「…」


「おい、藍木っ!」


「え…あ、そういえばいたの忘れてました」


「はぁ?お前みたいな奴に忘れられるとかありえないんだけど」


「いや、勝手についてきた人に言われたくないんですが…」


 そういえばテイラーさんがいるんだった。彼女は教室に入ってきてからというもの、黙って俺の隣の席に腰を下ろしスマホをいじり出したんだ。

 それで邪魔しないなら気にしないでいいか、て思って放置してたんだった。


「は?着いてきてないし。たまたま入ったら藍木がいただけだし」


 いやいや、教室に入ってきたとき笑っていたじゃないか。俺は見過ごしたりしないぜ。


「へー、そうですか。まあ、そういうことにしときますよ」


 この人、ツンデレか?現代ラブコメで一番忘れかけられているツンデレか?別に俺は嫌いじゃないけど、現実に〇〇デレ、なんて付く人いるんだな。

 貴重なサンプル提供ありがとうございます…


「なんか失礼なこと考えてない?」


「いいえ、何も」


「あそ」


 テイラーさんは疑いを隠すつもりは無いらしい。ばりばりにらんできている。どうやら相手の気持ちまで読む能力は持ち合わせていないらしい。


「それで何見てんの?」


「ブイチューバです」


「なんそれ?」


「あー、動く絵ですね。簡単に言えば」


 我ながらめっちゃざっくりだな。


「それ面白いの?」


「まあ、人それぞれじゃないですかね?」


「ふーん、藍木は毎日見てるの?」


「そっすね」


「ふーん、なるほどね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る