虚の深きを覗く母、闇に紛れ。

呪われた古木の深い虚には闇があり
覗き見る者を惹き込む闇には底がない。
 二進も三進も行かぬ。理が勝れば情が
死ぬ。情が勝れど行き着く処は、

          底なしの闇。

  「お前が鬼になれば良い。」

柘榴は血の味。いっそ自分が鬼となるしか
他に術はないのか。我が子を喰らう鬼にも
なれば、暗く底無しの闇の虚へ、ひとり
あの子を遣らずに済むのか。

その果実は慈悲であるのか。それとも
黄泉からの賜物か。

 どちらにせよ虚の底には闇。