愛は利き手に左右されない
鈴乃
第1話
「人体の構造的
と教授は言った。
「利き手を空けて恋人と手をつなぐと、相手の利き手の自由を奪うことになる」
「片方が左利きなら問題ないすよ」
「なるほど、一理ある」
教授は短く鼻息を吹いた。
「しかしこの世界では右利きが多数派なのだよ。愛し合う二人が自由に利き手を使える確率より、どちらかが不自由を
教授はため息とともに椅子にもたれた。
「それに耐えるのが愛だと、多数派どもは言うのだ」
ほつれた前髪が額に落ちる。
この人の話はいつも
そのくせ議題は妙に
だってつまり、『恋人とは手をつなぎたいけど、相手の邪魔をするのもされるのも嫌』って話だろ?
オレはクスッと笑った。
目線だけを上げた教授に片手を差し出す。
「オレ、左利きっすよ」
教授はクマの濃い目元をわずかに細めて微笑んだ。
「私もだ」
「だめじゃん」
End.
愛は利き手に左右されない 鈴乃 @suzu_non
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