31文字の恋物語

夜狩仁志

初恋 ~初(うぶ)な恋心~

春の風 ほほを撫で去る 温もりが

彼の手ならばと 望む早朝


また明日 別れ間際まぎわしゅに染まる

君の笑顔に 恋の夕暮れ


にわか雨 ひとつの傘に 君と僕

恵みの雨粒 永久とわに続けば


解答紙 氏名の欄に 彼の名も

連ねて書いて 婚姻届


野花摘のはなつ乙女おとめの姿に 秋桜コスモス

花恥はなはずかしく 赤くなるかな


波しぶき 浜辺を駆ける その姿

水のきらめき 君のかがや


夕明かり 伸びる彼の背 揺れる影

想いを胸に 影に添える手


窓際で 新緑眺める その瞳

視線の先が 私ならばと


黒髪の 川に流るる 花筏はないかだ

触れず撫でれず 風が吹き去る


彼の名を 口にするのも はばかられ

ノートの端に 記する想い


この想い 叶わぬ夢なら 雪となり

彼の手中しゅちゅうで 溶けて消えたい


木枯らしに 首のマフラー 強く巻き

彼の腕ならと 想う帰り


牡丹雪ぼたんゆき その美しさは 君のよう

積もる想いは 富士の高嶺たかねまで


右左みぎひだり 手袋分け合い 片方の

素手で繋がる 君の温もり


月面に 恋しい思いを 書き込んで

何処かで眺める 君へと伝われ


学校は 成功者たちの ビオトープ

群れなす細小魚いさな 恋に溺れて


イヤホンに 届け心の 相聞歌そうもんか

高鳴る鼓動に 想いを乗せて


別れ際 向かいのホームで 待つ君の

笑顔を遮る 無情な列車


青春と 恋は待っても 訪れず

探せば逃げる 小鳥のように


振り向けば 無窮むきゅう碧落へきらく 青い春

硝子ガラスの空に 写る雲無し

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31文字の恋物語 夜狩仁志 @yokari-hitosi

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