望んでしまった代償を払わせて

釣ール

今頃あの人はなにをしているのだろう

 自由になりたかった。

 そのために人手が必要なのは分かっているけれど、そのために友人関係を積み上げるのは単なる利用ではないだろうか?


 明美あけみ脳裏のうりに浮かんだ正論がかえって自分を傷つけた。


 私はそうやって人間関係を壊してしまう。

 そうではない方の意見をちゃんと聞かないからだ。


 反省しても壊れた人間関係は戻らないのかもしれない。

 どうしてパーソナルで人の幸せは決まってしまうのだろう。


 明美は今ほど自分で何でも出来る人間ではなかった。

 彼がいたから自炊じすいもひとり立ちも仕事も出来るのだ。


 中途半端だ。

 そう昔は自分を責めた。

 でも人の気持ちは分からない。


 彼の気遣きづかいが逆に高みを歩く住人に見えて追いつけず、知らない間に関係を切った。


 相手が女性だったとしても同じ道を歩んだだろう。

 相手も人間であるのなら結末は変わらない。


 明美は疑問ばかり人間関係で浮かぶ。

 そして三日間止まない大雨の光景の中で傘を何度も風で壊す人付き合いに嫌気いやけがさしている。


 正論をぶつけるのは医者も同じだ。

 人の不調に適当な話で金を稼いでる。


 あんな連中にはなりたくない。

 それが逆に彼を遠ざけたのかもしれない。


 こんな思いを何度も繰り返すような生活を送りたくないから彼も力を貸してくれた。


 明美の悩みは生活に支障ししょうを来すことはない。


 だからこそ彼がどこかで悩み疲れた時に、自分だけ元気なのも・・・いや、彼がそんな意地悪な人なわけがない。


 それでもつぐないとして日記をつけている。

 誰にも見せることはない中途半端を責めている記録。


 でも中途半端を責めることはしない。

 確かな答えはないからこそ明美は日記を続ける。


 もし彼と出会えるのなら、いっそ胸を張って迎え入れたい。

 弱った時は出来ることで力になる。


 恩返しではない。

 ただ償うことしか今の明美には出来ないと思い込んでいるから。


 そこから広げ、一人閉じこもらないように精一杯生きていく。

 選択肢はもっとあるはずと信じて。

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望んでしまった代償を払わせて 釣ール @pixixy1O

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